担任交代、息子は端末に触れなくなった 教師に左右される教育DX

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編集委員・宮坂麻子
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 全国の小中学生に1人1台の端末を配る「GIGAスクール構想」が本格スタートして、2年目を迎えた。デジタル化の波が学校現場にも急激に押し寄せ、「教育DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉も聞かれる。人と人がつながり、ともに学んで成長する場である学校に、どんな変化が起きていくのか――。

 人と人がつながり学ぶ。1人1台の端末により、つながりを広げる学校が全国に出てきている。

世界遺産の地域20校つながって授業、今年は海外とも

 その一つ、奈良市立辰市(たついち)小学校。5年生の猪井(いのい)葵羽(あおば)さんは、昨秋から友達数人と近くの川へゴミ拾いに行き始めた。理由は「ウミガメを救いたいから」。

 辰市小では昨年度、4年生の総合的な学習の一環で、世界遺産のある地域の学校同士をオンラインでつないで学ぶ「FURUSATO(ふるさと) MIRAI(みらい) MEETING(ミーティング)」を実施した。参加したのは奈良のほか、東京・小笠原諸島の母島、鹿児島の屋久島奄美大島、北海道・知床の斜里町など各地の小学校約20校。

 ICT(情報通信技術)活用をめぐる教師の得意・不得意や自治体格差に関係なく、オンライン会議システム「グーグルミート」などで、子ども同士がつながり学ぶ。世界遺産周辺の環境問題などを調べて、共有、議論、発表しあった。

 学習の中で猪井さんは、屋久島の子たちから、ゴミが原因でウミガメが死んでいくと聞いた。屋久島の子たちが拾ったゴミは奈良の川よりずっと少なく、島の電力の99%以上が水力発電でまかなわれていることも知った。「奈良の川をきれいにすれば海の水をきれいにすることにも役に立ち、カメも死なないかも」。そう友達と話して、川の掃除をするようになった。島の子どもたちは、台風で急に活動ができなくなる日もあり、地域の防災にも興味を持った。

 地域の企業の協力も得て、今年3月には各学校をつないだ最終発表会を行った。各地の大人たちともつながり、プラスチックゴミで校歌などのCDを作ってくれる人にも出会えた。

 発表会の後、小笠原村立母島小学校の5年生、稲垣歩琉(あゆる)さんは「いろんな学校とつながって、いろんなことがわかって楽しい」と語った。同校5年の岡林政吾さんも「いろんな話が聞けて行ってみたくなった」。屋久島町立安房小学校の5年生、大垣つきさんは「奈良の子たちは意見が活発で驚いた」と振り返った。

 辰市小は今年度、全校でこうした取り組みを進め、海外にも視野を広げる。まずは、知人を通じてミャンマーの学校と夏休み明けにつながる予定だ。

 辰市小では、児童は休み時間も自由に端末を使い、家庭にも持ち帰る。日々の連絡、宿題、欠席児童向けの板書も端末上にアップしている。岸下哲史教頭は「オンラインは学びの距離をなくし、子どもの視野を世界へ広げられる」と可能性を感じている。

教育現場で加速するデジタル化。記事後半では、中学入学後に端末活用をあきらめた保護者の体験や、文部科学省の情報関連会議の座長を務める堀田龍也さんに「端末活用格差」について尋ねたインタビューも紹介します。

小学校 連絡も発表もオンライン→進学した中学は「GIGA以前」

 文部科学省の調査では昨年度末現在、1人1台の端末が整備された全国の小中学校は98・5%(見込み)。だが、学校ごと、教員ごとの活用の差は大きい。

 首都圏のある公立小学校は「…

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    内田良
    (名古屋大学准教授・教育社会学)
    2022年5月30日13時40分 投稿

    【視点】学校はすさまじくICT化が遅れてきた領域です。コロナ禍におけるGIGAスクール構想の前倒しによって、期せずして学校のICT化が進みました。ようやく、先進国からの大幅な遅れをいくらか取り戻したように見えますが、一方で記事にもあるとおり、学校や