チョウザメ、刺し身のお味は… 栄養満点の高級食材として定着目指す

谷口哲雄
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 チョウザメといえば卵を塩漬けにしたキャビアが世界三大珍味の一つとして有名だが、欧州や中国では魚肉も高級食材として珍重されてきたという。どんな味なのか。チョウザメ料理の専門店が茨城県桜川市にあると聞き、訪ねてみた。

 古民家を改装したレストラン「レストキャビン古民家 スタージョン」は2020年2月のオープン。チョウザメの魅力を広く知ってもらおうと、養殖加工を営む「つくばチョウザメ産業」(本社・つくば市)が開設した。スタージョンはチョウザメの英語名から取った。

 店内に入ると、水槽で体長約50センチのチョウザメが泳いでいる。サメのような姿とチョウに似た形のうろこが名前の由来だが、サメとは全く別の種類の魚だ。肉には、人間が体内で必要量を合成できない必須アミノ酸コラーゲンが多く含まれ、ヘルシーな食材だという。

 メニューには、なめろう丼(税込み990円)や、燻製(くんせい)入りのペペロンチーノ(同1100円)などが並ぶ。人気メニューの一つという漬け丼(同950円)を注文した。薄切りされた淡い桃色の刺し身は、しっかりした歯ごたえだ。臭みや癖のない淡泊な味わいで箸が進む。

 ほかにも魚肉入りの薬膳ちまき(同400円)やキャビア(同6480円、20グラム)などが売られている。

 同社取締役の白田(はくた)正男さん(64)は「チョウザメは皮は湯引き、骨は唐揚げ、頭は出し汁にと無駄にするところがない。ナゲットや西京焼きなど新たなメニューも開発して消費拡大につなげたい」と話す。

 同社は12年前、つくば市内の商業者らがチョウザメを街おこしにつなげようと立ち上げた。桜川市内の石材加工場を改造した施設などで約3500匹を養殖している。

 本社をつくば市に置いたのは、早くからチョウザメ養殖に取り組む施設が地元にあったからだ。半導体製造装置などに使われる特殊バルブのメーカー「フジキン」(本社・大阪市)が、チョウザメの養殖に向け動き出したのは1987年。89年からは、つくば市の事業所の一角で飼育を始めた。同社の得意分野で、気体や液体の流れを調整する流体制御の技術が生かせて、他社が手がけていない新規事業として選ばれた。

 旧ソ連から約100匹の幼魚を譲り受けた。えさのやり方から孵化(ふか)の方法まで試行錯誤の連続だったが、92年に国内の民間企業では初めて人工孵化(ふか)に成功し、94年から稚魚の販売が始まった。

 現在、水槽では最大約2メートルのチョウザメがゆったり泳ぐ。常陸太田市などにも養殖場があり、北海道から九州まで約40道府県に年間数万匹の稚魚を出荷している。養殖水槽の水で農作物を水耕栽培する循環型農業「アクアポニックス」の研究も進める。

 担当の平岡潔さん(55)は93年の入社から30年近くチョウザメ一筋。「丈夫で育てやすく、全国どこでも川の水や地下水で飼える。高級食材として普及させたい」と話す。

 チョウザメを茨城の新しい特産品にしようという動きも進む。2017年設立の「いばらきキャビアフィッシュ協力会」には、つくばチョウザメ産業やフジキンを含む養殖・加工業者、飲食店、金融機関など約15団体が参加し、新商品の開発などを手がける。

 県も特産化をめざし、今年度から予算に盛り込んだ。県産キャビアのブランド化や東京でのPR活動などを計画。県水産試験場内水面支場(行方市)は、生後3~4年まで分からない性別を、PCRで早期に判定する技術開発などに取り組む。キャビア生産にかかるコスト減につながる。

 県水産振興課の担当者は「県内にはコイやニジマスなど淡水魚養殖の実績があり、その経験はチョウザメにも生かせる。新しくて高級感のある食材として特産化したい」と話す。(谷口哲雄)