歌に乗せて平和への願いを世界に広げたい――。そう考えた東京音楽大学(東京都目黒区)の教員や学生たちが、コンサートで歌った音源にウクライナ語、ロシア語、英語、日本語の4カ国語の歌詞を添えた映像の配信を始めた。ロシアによるウクライナ侵攻後、核兵器使用の脅威が現実味を帯びるなか、「唯一の戦争被爆国の日本から発信したい」と学生らは言う。
学生たちは2月22日、「被爆ピアノコンサート」をライブ配信した。コロナ禍で延期と開催地の変更を余儀なくされての公演。演奏に使われたのは広島への原子爆弾投下のとき、爆心地の近くで被爆したピアノだった。
その2日後、ロシアがウクライナに侵攻した。学生らはツイッターでやりとりし、話し合った。「私たちは一体何をやってきたんだろう」「音楽で世界を変えたつもりはないが、心が折れそうになる」
特任講師でコンサートを支えてきた坂元勇仁さん(61)は自問した。「今だからこそ、できることはないか」。思いついたのがコンサートのフィナーレで合唱した歌の映像にウクライナ語、ロシア語、英語で歌詞の訳をつけ、YouTubeで発信することだった。
歌は「リメンバー」。作詞家の故なかにし礼さんが、ソプラノ歌手の故佐藤しのぶさんに「平和の歌を」と求められて作った。2014年、長崎市で開かれた国際平和シンポジウム(朝日新聞社など主催)で披露された。
佐藤さんはチェルノブイリ原発事故で被曝(ひばく)した子らの療養所で歌ったのをきっかけに、「核なき世界への願いを日本から発信したい」と考えた、と生前の取材に語っていた。
難航したウクライナ語の翻訳者探し
今回、誰に歌詞を訳してもら…
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