戦争続く中でのカンヌ映画祭 目を引いたのは「小さな物語」だった

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カンヌ=編集委員・石飛徳樹
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 第75回カンヌ国際映画祭は、スウェーデンのリューベン・オストルンド監督の「トライアングル・オブ・サッドネス」に、自身2作連続となるパルムドールを与えて閉幕した。是枝裕和監督が韓国で撮った「ベイビー・ブローカー」とパク・チャヌク監督の「別れる決心」が主要賞を獲得。今年も韓国勢が存在感を示した。世界ではロシアのウクライナ侵攻という大きな危機が進行中だが、カンヌでは大きな物語よりも小さな物語が目を引いた。

パルムドールで得られる自由

 「ブラザー&シスター」「マザー&サン」「レイラの兄弟」「チャイコフスキーの妻」。コンペ参加作のタイトルを並べてみると、多くが身近な人間関係をモチーフにしていることが分かる。75回記念賞を受けたジャンピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督の「トリとロキータ」も、アフリカから欧州に来た若い“姉と弟”の名だった。

 仏の俳優バンサン・ランドンら審査員が最高賞に選んだ「トライアングル・オブ・サッドネス」も、恋人同士が食事の支払いを巡って口論になるというセコい話から始まる。しかし、彼らが豪華客船の旅に出るあたりから、物語は急激に舵(かじ)を切り始め、観客は、想像をはるかに超える地平まで連れていかれる。

 オストルンド監督は受賞会見で「社会の中で人々がどう共生していくのかに私は興味があります。状況に応じて人々はどう変化していくのかを表現しました」と語った。2017年のパルムドール作「ザ・スクエア 思いやりの聖域」では知識階級を笑いものにしたが、今回、彼の標的になるのは富裕層だ。皮肉と下劣は前作の何倍にも膨れ上がった。嫌いな人は吐き気を催しただろうが、パルムドールを得るということは、こういう自由を得るということなのだ。

 第2席のグランプリは2本。ベルギーのルーカス・ドン監督は「クローズ」で“男らしさ”の呪縛が生んだ悲劇を描いた。親友だった少年が突然よそよそしくなることから起こる、つらすぎる結果。2人の少年の巧まざる演技が胸を締め付けた。

 もう1本、フランスのクレール・ドゥニ監督の「スターズ・アット・ヌーン」は、ニカラグアを舞台にした米国女性と英国男性のラブストーリーだが、政情不安という社会背景が生かしきれていないように思えた。

「是枝監督は検閲せずに書いた」

 身近な人間関係が次々登場す…

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