学校側に「責任なし」 部活動での丸刈り訴訟判決、識者はどう見る

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吉田啓 堀越理菜 聞き手・吉田啓
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 高校の部活動で強制的に丸刈りにされたり、校歌の練習で威圧的指導をされたりしたことなどが原因でうつ状態となり、転学を余儀なくされたとして、熊本県済々黌高校の元生徒の男性(20)が熊本県を相手取り1円の損害賠償を求めた訴訟の判決が30日、熊本地裁であった。中辻雄一朗裁判長は学校側に安全配慮義務の違反はなかったなどとして、訴えを退けた。原告側は控訴の意向を示している。

 判決によると、男性は2017年4月に入学。男子ソフトテニス部に入った直後、上級生部員の手で丸刈りになった。また、応援団員に校舎屋上で2クラス分の同級生と一緒に校歌斉唱などの指導を受けた。男性は5月に退部し、18年5月に転学した。

 原告側は、丸刈りは上級生から「みんなやるから」などと言われて強制的にされた。校歌指導は休憩なしで1時間半にわたり、応援団員に「声が出ていない」などと顔の近くで威圧的に指導された。男性は精神的苦痛を受けており、これらの行為はパワーハラスメントにあたると主張した。

 判決は、丸刈りについて、男性は部員間での合意があることを体験入部の段階で知っていた。その後、自ら上級生に丸刈りを依頼しており強制はなかったとした。

 校歌指導については、休憩を取らず大声で指導したことで「新入生の中には、大きな圧迫感や緊張感を感じた者もいると考えられる」と指摘した一方、「目的は生徒の団結力や愛校心を高めることにあり、緊張感を持って集中的に合同で練習する場を設けることが有益である」と評価。

 応援団が事前に新入生への暴力、暴言はしないことなどを確認していたことや、複数の教員が指導の様子を見守っていたことから、安全配慮義務違反はなかったと結論付けた。

 県教育委員会は取材に対し、判決について「判決の詳細は把握していませんが、県の主張が認められたものと受け止めています」とコメントした。(吉田啓)

 判決を受けて、元生徒の両親…

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    内田良
    (名古屋大学准教授・教育社会学)
    2022年5月31日21時59分 投稿
    【視点】

    学校の厳しい校則をはじめ、学校における威圧的あるいは軍隊的と言ったほうがよいかもしれない活動に関する民事訴訟は、これまでもほぼすべて、学校側の主張が認められ、原告敗訴がつづいてきました。 今回、やや小さな論点ですが、私が非常に気になったこ

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    遠藤謙
    (エンジニア)
    2022年5月31日20時14分 投稿
    【視点】

    旧制中学の伝統的な応援団。私自身、正直入学した高校で体験した応援練習に良い思いはしなかったが、伝統であるということを何も疑わず我慢した。今思い返すと、あれは間違いなくいき過ぎた身体完全性の侵害であると個人的に思う。 身体完全性とは肉体