第1回ロシア占拠の村、最愛の息子が消えた 泣き続ける母に飛び込んだ情報

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ディミル郊外=高野裕介
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 無事でさえいてくれたらそれでいい。できるなら、この手でもう一度抱きしめたい。

 49歳の母親が、24歳の末っ子を思わない日はない。彼の行方がわからなくなって、2カ月半が経った。

 彼らの身の安全のため、ここでは母親をタティアナ・コバレンコ(49)、息子をトーリャ(24)という仮名で呼ぶことにする。

 ロシアによるウクライナ侵攻は、人口1500人ほどの田舎町の、ごく普通の母子の幸せを破壊した。

 首都キーウ(キエフ)の中心部から北西に約40キロ、ディミル郊外の村。舗装されていない道の両脇に緑が生い茂り、どこまでも突き抜けるような青い空が広がるこの場所で、タティアナとトーリャは暮らしていた。

怖がる母に「僕が行かなきゃ」

 2月24日にロシア軍が侵攻を始めると、キーウへの南下ルートとなるこの一帯は占拠され、人々は自由に動くことができなくなった。

 建設作業員だったトーリャは、ボランティアとして食料の配給を買って出た。

 ジャガイモや牛乳、小麦……。余っている人から譲り受け、必要とする人に車で届けた。

 頻繁に外に出れば、いつロシア兵に捕まってもおかしくはない。タティアナは怖がり、何度も止めた。

 「子どもにご飯を食べさせられないと言って泣いているお母さんがいる。僕が行かなきゃ。心配しないで、ママ」。トーリャは、そう答えた。

 3月18日午前10時ごろ。朝から軍用車両が通る音や、爆発音が聞こえた。

 それでも、トーリャは出ていった。

 パンを焼くための小麦を近隣…

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