大切なのは「考える」こと 声優・梶裕貴、迫真の演技の裏にあるもの

有料記事

聞き手・岩本美帆 写真・伊ケ崎忍
[PR]

 女の子にからかわれて焦る中学生男子から、巨人と激闘する異世界の青年まで、声優・梶裕貴さんはどのような役柄も圧倒的なリアリティーをもって演じることができる、業界のトップランナーです。迫真の演技の裏には、梶さんが大切にしている「考える」作業があるといいます。自身も父から受け継ぎ、「未来の我が子に継承したい」と話す「考えること」について、梶さんに語ってもらいました。

 自分の振る舞いが相手にどんな影響を与えるか、常に考えて行動しています。「考えてしまう」と言った方が正しいかな。そういう性格なんです。例えばささいなことですが、エレベーターに乗るときに「お先にどうぞ」と言われたら、急いでいなくてもうれしいですよね。仕事場でも、自分のやるべきこと以外でも、「これをやっておいたら相手はストレスなく仕事できるかな」と思う作業をしておきます。自分がいる場所では、周りの人に心地よくあってほしいんです。

思春期の頃に反発した父、今は可愛らしく見える

 この性格は育った環境、特に親の教えが大きいと思います。父は在宅で設計の仕事をしていました。「先回りして考えて行動しろ」と言われていて、「今うるさくしたら邪魔かな」とか、「この道具を準備しておいたら助かるかな」など、自分でもよく考えていました。思春期の頃は「言っていることは正しいけれど、みんながみんなできるわけじゃない」と反発もしましたが、自分が大人になって親を客観的に見られるようになり、その心がけは素敵だなと思えるようになりました。

 子どもの頃って、自宅が生活の半分を占めていて、親は子どもにとって絶対的な存在ですよね。大人の代表というか。他の大人を知らないから、親が正しいと思っている。

 でも、(声優の)養成所で何十歳も年上の同期の人と一緒に過ごしたりするうちに、切り離して考えられるようになりました。「完璧だと思っていたけれど、全然できないところもあるじゃん」「あのときは怒っていたようだったけど、機嫌が悪かったのかな、嫉妬していたのかな」とか。同じ大人として、ひとりの男性、ひとりの女性だったんだなと、可愛らしく見えてくるようになったんです。

 いずれ自分の子どもが生まれたら、親の教えの中で、良くなかったなと思ったところは省いて、良かったなという部分は継承していけたらなと思っています。

 コロナ禍で親とはなかなか会えなかったんですが、これからは一緒に酒を飲むとか、親孝行していけたら。父は僕と似ていて、アクティブでない面もあるのですが、会いたがってくれているのは知っているので、機会を作っていきたい。10代の頃は反発もしたので……。

公開間近のアニメ映画「劇場版『からかい上手の高木さん』」では、中学生の「西片」役を演じます。テレビシリーズで3期演じた役柄ですが、梶さんは「育った環境も人間性も、僕とは違う」と言います。後段では30代で中学生を演じるにあたり、どんな準備や役作りをしているのかについて、語ってもらいました。

■準備して臨んでも現場ではゼ…

この記事は有料記事です。残り1466文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません