難民テーマの「マイスモールランド」に共感…監督には戦略があった

浅倉拓也
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 自分に何ができるだろう――。在日外国人や難民といった硬いテーマながら、「共感」を呼ぶ異色の作品が5月から全国の主要映画館で公開されている。「マイスモールランド」だ。主演の嵐莉菜さんらの魅力もあって、インターネットの映画レビューサイトなどでは高い評価を得ている。

 JR大阪駅のビルの最上階にあるシネコン。平日の夕方で観客は多くなかったが、胸に迫るシーンでは、鼻をすすったり、ため息をついたりする音が所々から聞こえた。

 物語の主人公は埼玉県で暮らすクルド人の女子高校生。難民申請が不許可になり、家族そろって「不法滞在」の状態になる。ささやかな日常や希望が失われていく。

 監督の川和田恵真さん(30)は、ある女性兵士の写真がきっかけでクルド人に関心を持ったという。トルコやイラン、シリアなどに住み、「国を持たない世界最大の民族」と言われる人々だ。日本でも埼玉県などに多くいることを知り、女子高校生のいる家族らに取材を重ねた。彼らの大半はトルコ国籍。トルコ政府はクルド人を敵視している。彼らは日本に難民として受け入れるよう求めているが、入管出入国在留管理庁)は認めない。トルコとの友好関係を壊したくないという日本政府の外交的な配慮ではないか、ともみられている。

 川和田さん自身、父親が英国人のミックスルーツ。日本で育つなかで「居場所」について考えさせられてきたことも、彼らにひかれた理由の一つだという。「国とは。居場所とは。彼らから問いかけられているように感じた」

 「自分は何者か」というアイデンティティーの葛藤など、誰もが多少は経験したであろう10代の日常を描くことで「自分ごととして見てもらえるものにしたかった」。

 「難民申請」や入管施設への「収容」「仮放免」など、テーマの背景には複雑な制度の問題もある。だが、難しい説明はできるだけ避けた。「説明して分かることでもないので、どう彼女が自由や尊厳を奪われていくのか、物語を通して伝えるやり方にした」。さらに「あまりドラマチックにしすぎない。現実に起きていることなので、淡々と描くようにした」と話す。

 ドキュメンタリー映画とは違う「共感」のしやすさや、主人公サーリャを演じた嵐莉菜さんらの魅力もあって、高い評価を得ている。「自分に何ができるだろう」といったコメントに、川和田さんは手応えも感じているようだ。「あまり(評価を)見過ぎない方がいいと思っているんですが……」と言いつつ、「見てくれた人の多くには届いているのかな」と言う。

 いま、難民申請をしている在日クルド人には新たな不安が生じている。難民申請を繰り返す外国人を強制送還しやすくなるよう、法務省出入国管理法の改正を考えているのだ。入管の審査で難民と認定してもらえなければ、申請を繰り返さざるをえない。在留資格のないクルド人たちは、すでに生きるために働くことも、健康保険に入ることもできない、過酷な生活を何年も強いられている。法改正されれば、さらに厳しい立場に追い込まれる可能性がある。

 川和田さんは「映画がすべてを指し示すべきではないと私は思っている。(映画のメッセージを)受け取った方それぞれが未来につなげていってほしい」と話す。(浅倉拓也)