第109回米提供の新兵器、効果は限定的か ウクライナが描く反撃シナリオは

有料会員記事ウクライナ情勢

聞き手・伊藤弘毅
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 バイデン米政権が、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」をウクライナに供与すると決めました。いったいどんな兵器で、どんな場面で活躍するのか。なぜいま、ウクライナでこの兵器が必要とされているのか。相次ぐ兵器の供与は、対立のさらなる激化を招かないのか。ロシアの軍事戦略に詳しく、ウクライナでの戦況についてテレビのニュース番組などで連日解説している、防衛研究所の兵頭慎治・政策研究部長に聞きました。

敵の後方陣地も正確に攻撃

――バイデン政権が、ウクライナに新たな兵器を提供する方針を表明しました。どんな兵器でしょうか。

 HIMARSは米国陸軍が開発し、主に米軍が使っている兵器です。在日米軍にも配備されているほか、シンガポールアラブ首長国連邦など米国の友好国も配備しているとみられます。射程が最大300キロ程度と長く、標的に精密誘導できるロケットを発射できます。敵方の奥深くにある後方陣地にも正確に攻撃できる兵器で、「阻止攻撃用」といえる使い方ができます。ウクライナ側はこれまでは榴弾(りゅうだん)砲のような最大射程が数十キロ程度の兵器が中心だったので、ロシア側に対してより効果的な反撃が可能になります。

 HIMARSは、ウクライナ側が4月13日に米国に供与を要求したリストに入っていました。米国は1カ月以上かけて慎重に検討し、今回供与を決めたわけですが、供与するロケットは最大射程が70キロ程度と比較的短いものになりました。

――4月13日というと、ロシア軍がウクライナ東部での作戦に戦力を集中する方針を示し、首都キーウ(キエフ)を含む北部などから撤退した後のことです。なぜウクライナはこの兵器の供与を米国に要求したのでしょうか。

 平地の多い東部では、戦車や大砲など重火力同士の地上戦になると想定されていました。ロシア軍はこうした戦闘で有効な長射程の兵器を多く保有しているため、圧倒的に有利とみられていました。比較的射程の短い兵器が中心だったウクライナ側は、東部での戦いを有利にするため、射程の長い兵器の供与を西側に求めたのです。あとは、実際に何基供与されるのか、ですが……。

射程300キロはハイリスク

――米国防総省高官によると、提供されるHIMARSは4基とのことです。

 4基ですか。バイデン政権としてはウクライナの強い求めには応えつつ、射程だけでなく、供与するHIMARSの数量もかなり限定しているようですね。供与を求めたウクライナの狙いから言えば、射程70キロ程度のロケットではなく、実際にはもっと射程の長いロケットと、もっとたくさんのHIMARSが欲しかったのではないでしょうか。

 ただ、最大射程300キロだ…

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