嫌われた住宅診断、やまぬ囲い込み… 「正直不動産」が映す裏事情

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編集委員・中川透
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アナザーノート 中川透編集委員

 NHKドラマ「正直不動産」(毎週火曜夜10時~、全10話)が人気だ。だれもに身近な家がテーマなだけに、自分や家族の住まいのことも思い浮かべ、共感しつつ楽しめる。

 主役の山下智久が演じるのは、「登坂(とさか)不動産」社員の永瀬財地(さいち)。「千三つ(千の言葉のうちに真実は三つだけ)」といわれる業界で、ウソもいとわぬトークでよい成績をあげてきた。しかし、ふとしたきっかけで、ウソをつけない身になる。商売上はお客さんに包み隠したくなる実情や本音も口にして、トラブルになったり、逆に信頼を得たりする。

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 原作の漫画は「業界の闇をさらけだす皮肉喜劇」として話題を集めた。ドラマは少し趣を変え、家を巡る出会いやわかれ、営業社員の喜怒哀楽などを前面に描いている。

 第5話では、インスペクションがとりあげられた。中古住宅を安心して売買できるように、家の状況を第三者が診断する調査だ。壁や住宅の土台部分のひびわれ、水回りの傷みなど、住み手にはわかりにくい不具合がないか、専門家が確かめて助言する。長年手がけてきた不動産コンサルティング会社「さくら事務所」(東京都)が、この回の制作に取材協力した。

 「あんたらのやっていることは単なる粗さがし。業界の面汚しだ」。同社の大西倫加(のりか)社長はインスペクションを広げようとしていた10年以上前、どなられたことを思い出す。地方都市であった業界団体会合でのこと。集まった約150人ほぼすべてが黒いスーツ姿の男性という会場で、サービスに関する講演後の質疑のときに、重鎮の不動産会社社長からあびせられたという。欠陥が見つかれば、売買しにくくなる恐れもある。そんなサービスを手がける女性に、風当たりは強かった。

 「今は変わりましたが、昔の不動産業界は男尊女卑と年功序列がきつく、体育会系のヒエラルキー型の体質でした。男性でも30~40代だと小僧扱い。私は講演後のあいさつの場で名刺を捨てられたり、ネットで容姿を誹謗(ひぼう)中傷されたりすることもありました。それだけに、住宅診断のサービスがドラマで多くの人に知ってもらえるまでになるなんて」。大西さんは振り返る。

 もともとは広報やPRをする会社に勤めていた。クライアント(顧客)だったさくら事務所の創業者から約10年前、経営のバトンを引きつぐように頼まれた。漫画「ナニワ金融道」で読むような、こわもての男性たちがいっぱいとイメージして飛び込んだ世界。多くの不動産会社員らと知り合ううちに、別の姿も見えてきた。

 一個人として接すると、家族や周囲のしあわせを願い、おかしな商売のやり方には疑問も感じる普通の人たち。しかし、組織人としては、厳しいノルマや激しい競争のなかで、よりもうかるやり方に突き進む。葛藤や悩みを感じながら仕事に励む人たちの姿だった。

「囲い込み」、お客さんがとれる術は

 疑問視されながらも、業界内で長年続いている商慣行の一つに、「囲い込み」がある。

 家の仲介では、業者間のシス…

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