第110回装備20倍で東部猛攻のロシア 耐えるウクライナ「二本立ての目標」

有料会員記事ウクライナ情勢

聞き手・佐藤達弥
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 ロシア軍が、ウクライナ東部で攻勢を強めています。ルハンスク州の要衝セベロドネツクの大半を支配して同州の完全制圧を視野に入れ、ドネツク州でも支配地域を広げています。ウクライナ軍は劣勢に立たされているのか。終戦に向かうシナリオはどんな展開が考えられるのか。ウクライナ外務省で専門家審議会の委員を務めた経験もある政治学者、ウォロディミル・フェセンコ氏に聞きました。

 ――ロシア軍はウクライナ東部で猛攻を仕掛け、ルハンスク州の完全制圧に迫る勢いです。なぜ、このような事態になっているのでしょうか。

 まず第1に、ロシアが戦争の戦略と戦術を変えたからです。ロシアは侵攻の当初、ウクライナ軍が弱いとみなし、首都キーウ(キエフ)や第2の都市ハルキウなどの大都市を攻略しようと考えていました。ウクライナ軍が彼らの予想を上回る強さを見せたため、その戦略は失敗。ロシアはルハンスク、ドネツク両州からなるドンバス地方に戦力を集中することを決めたのです。

 ロシアのプーチン大統領は2月24日に開戦を宣言した際の演説で、この戦争が(現地の親ロシア派武装勢力が名乗る)いわゆるルハンスク、ドネツク両人民共和国を助けるための戦いであることを述べています。両人民共和国の支配地域を広げ、ルハンスク、ドネツク両州の(西側の州との)境界に到達することが軍事作戦の公式的な目的になりました。

 第2に、ロシアが複数の地域で戦うだけの戦力がないことを彼ら自身が理解したからです。このため、兵力をドンバス地方に集中させています。ハルキウからは一部の部隊を退かせ、ドンバスに移しました。支配地域を広げてドンバスの西端に到達すれば、ハルキウや中部の重工業都市ドニプロ、中南部ザポリージャ、南部オデーサに向かって進むことができるようになります。

 そのためにも、まずはドンバスを押さえる必要がある。「ドンバス地方を解放した」ということを示さなければならない、という政治的な理由もあります。ロシアはドンバスの作戦を通じ、ウクライナ軍の主要部隊を撃破することも狙っています。

 一方、ウクライナには別の戦…

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    服部倫卓
    (ロシアNIS経済研究所所長)
    2022年6月7日12時4分 投稿
    【視点】

    フェセンコ氏はウクライナを代表する政治評論家であり、さすがに読みごたえのありバランスの取れた内容のインタビュー記事だった。 個人的にも、フェセンコ氏が論じている、近いうちにロシア・ウクライナ両国が和平に動く可能性は低いという点に、同意であ

連載ウクライナ危機の深層(全150回)

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