記憶の動員目指すロシアとウクライナ 民衆が受け継ぐ独ソ戦の記憶

有料会員記事ウクライナ情勢

聞き手 シニアエディター・尾沢智史
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立石洋子さん|ロシア・旧ソ連現代史研究者

 国を挙げた戦いでは、愛国心を高めるために過去の記憶が動員される。だからロシアとウクライナの戦争は記憶をめぐる戦争でもある。一方、国民の記憶を一つにまとめたい権力に対し、国民の記憶は多様だ。そんなせめぎ合いについて、地域の歴史に詳しい識者に尋ねた。

同志社大学 立石洋子准教授

1980年生まれ。専門はロシア・旧ソ連諸国の現代史。著書に「スターリン時代の記憶」「国民統合と歴史学」など。

交論 記憶と戦争

 ――5月9日のロシアの対独戦勝記念日では、愛国心を強調する演出が目立ちました。

 「独ソ戦について国民には複雑な感情があります。毎年行われている調査では、『5月9日はあなたにとってどんな日ですか』という質問に対して、『国家の祝日』より『人々の祝日』と答える人の方が多いのです」

 「『大祖国戦争(独ソ戦)という言葉からどんな考えが浮かびますか』と聞いた2022年4月の調査でも、1位は『国や国民への誇り、愛国心』ですが、2位以下には『恐怖』『悲しみ、痛み、涙』『決して忘れられない歴史』『平和への願い』などが続き、良いイメージばかりでもありません」

 ――プーチン大統領は、今のウクライナはロシアがつくったものだと強調しています。

 「そういう歴史認識を強調する人もいますが、ロシアとウクライナはもともとひとつだという歴史の理解を、だから戦争をすべきではないという反戦の理由と考えている人もいます」

記事後半では、ソ連とウクライナの歴史を切り離そうとした、ウクライナ・ユーシェンコ政権の歴史認識をめぐる政策にも触れながら、両国の国家と民衆それぞれの歴史認識について考えます。

 ――しかし、ロシア国民の多くは「特別軍事作戦」を支持しているとされます。

 「侵攻への支持と歴史認識が…

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