流すしかなかった人形 阿波木偶箱まわし、消えかけた伝統芸

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杉田基
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 伝統芸能「箱まわし」を後世に伝える施設「人形のムラ」が今春、徳島市に開館した。

 木偶(でこ)(人形)を持って家を回り、三番叟(さんばそう)まわしを演じて正月を祝う門付け芸。人形を木箱に入れ、各地で人形浄瑠璃芝居を演じたのと合わせ、「箱まわし」と呼ばれる。

 明治の頃には、箱まわし芸人が徳島県内に200人以上もいたとされるが、近年はほとんど見られなくなった。箱まわしを生業(なりわい)としていた被差別部落の人たちは、人形を持っていると、出自がわかってしまうと考え、こっそり川に流してしまう人が相次いだという。

 人形のムラを運営する「阿波木偶箱まわし保存会」顧問で、被差別部落出身の辻本一英さん(70)は「箱まわしは部落で引き継がれた芸能だとみんな知っている。子や孫に背負わせたくないと、この辺ではほとんどみんな人形を川に流してしまった」と語る。

子や孫に背負わせたくない

 辻本さんには約25年前の忘れられない思い出がある。高校の臨時教員を務めながら、全国各地で同和教育の講演をしていた。

 そんな時、知り合いの骨董(こっとう)屋から電話があった。「あんたの集落になくてはならんものが出てきた」

「人形のムラ」の開設に至るきっかけは、辻本さんの祖母との思い出がありました。記事後半では、差別と向き合い、伝承にかけた姿を紹介します。

 駆けつけると、古いえびすの…

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