ドヤと呼ばれる宿泊施設が立ち並ぶ東京・山谷。20年前、この街で身寄りのない人たちの「ホスピス」施設を創設した男性がいる。理想のケアを求めて挫折した男性はいま、支援を受ける側になった。1人の介護ライターが男性の半生を追い、本にまとめた。
男性は、山本雅基さん(58)。
ドヤ住まいで行き場のない人のための「終(つい)のすみか」をつくろうと、4階建てのビル「きぼうのいえ」をつくった。2002年のことだ。
病院ではなく、訪問診療・看護が受けられる宿泊施設だ。不足する資金は寄付や借金でまかなった。
映画「おとうと」のモデルにも。しかし…
活動はメディアの注目を集めた。
テレビや新聞で特集が組まれ、「きぼうのいえ」は山田洋次監督の映画「おとうと」に登場する施設のモデルにもなった。
介護ライターの末並俊司さん(53)が山本さんと出会ったのは18年の夏。末並さん自身も両親を介護の末にみとった後で、「何かしらの救いを求めて」山本さんを訪ねたという。
しかし、目にしたのは「期待と大きくかけ離れた現実」だった。
部屋には異臭が漂い、こぼれ…