太陽光の10億倍、ナノレベルで物質を解析 次世代放射光施設を公開
特殊な光を当てて物質をナノレベル(100万分の1ミリ単位)で解析することができる次世代放射光施設(仙台市青葉区の東北大学青葉山新キャンパス)が6日、報道陣に公開された。医療や産業分野の研究などに加え、「米の食感」の分析など、企業の製品開発での活用も期待される。
国立研究開発法人「量子科学技術研究開発機構」と一般財団法人「光科学イノベーションセンター」が整備を進めている。新施設の愛称は「ナノテラス」。2024年度から運用を開始し、10年間で1兆9千億円の経済効果を見込んでいる。
放射光施設は、X線で物質の極微細な構造を調べることができる。太陽光より10億倍明るいため、ナノレベルで物質を解析することができる。国内の既存の施設より新施設は最大100倍明るく、測定時間が短くなるという利点もある。
施設によると、マウスの脳内の神経を自然に近い形で観察することができ、がんの治療やアルツハイマー病の原因解明や、より高性能の量子コンピューターや電池の開発など幅広い利活用が期待できるという。
約380億円の総工費の一部は、企業や地元自治体らが拠出し、一定額を払うと企業も施設を使うことができる。現時点で120社以上が参加を希望しているという。企業側にとっては「炊飯器で炊いた米粒の食感を放射光で分析したい」「日本酒の味のメカニズムを解析したい」と自社製品の開発や研究に生かせる利点がある。
この日は電子を光の速さまで加速させる長さ110メートルの線型加速器の設備の一部や、放射光を使った実験を行うホールなどが公開された。(福岡龍一郎)
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