嘆き悲しむ母親、銃を持つ女性兵士――。ウクライナ侵攻下で語られる女性の姿に、私たちは感情を揺さぶられる。これは一人ひとりの実像なのか。戦争がつくりだす「女」なのか。
恥ずべきは加害者、社会全体で確認を 秋林こずえさん(ジェンダー研究者)
ウクライナではロシア軍による性暴力が起きています。
大規模に性暴力が起きた1990年代のユーゴスラビアとルワンダの紛争を経て、紛争下の組織的性暴力は、国際社会が取り組むべき課題と考えられるようになりました。現在では、性暴力は戦争の「武器」「戦略」となるというのが国際的な見方です。ウクライナの検事総長や人権団体も、ロシア軍のレイプを戦争犯罪と非難しました。
なぜ「武器」になるのか。紛争下の性暴力被害者の多くは女性です。女性を襲うことは、「女性を守るため」に戦う敵の男性兵士集団に「守れなかった」と知らしめ、心理的ダメージを与えます。そして被害者の女性たちも、性暴力被害を非難され差別を受けてコミュニティーから離れざるをえなくなることが多い。コミュニティー自体も働き手を失って弱体化します。
女性が男性やコミュニティーの所有物と考えられ、自立した存在と見なされない家父長制的な社会ほど、「武器」によるダメージは大きくなります。攻撃する側される側双方が、女性を「守る対象」、受け身の存在と考えるところに「戦略」が成り立つのです。男性が性暴力の被害を受ける場合もまた、「お前は一人前の男ではなく、守られる対象である『女』になり下がった」と侮辱するという、戦略的な意味をもちます。
秋林こずえさんはこの後、被害を受けた女性へのケアや、これ以上殺し殺されないために、国際社会や私たちに求められることを語ります。記事後半では、戦争の社会史を研究する柳原伸洋さんが、個人や自由を塗りつぶす戦争の本質と「戦う女性」について、まんが原作者の大塚英志さんが、女性を利用する戦時下のプロパガンダの本質について話します。
一方で、被害が告発される際…
- 【視点】
ユニセフは、1990年代のボスニア・ヘルツェゴビナの紛争で2万人から5万人の女のが、ルワンダで起きた大虐殺では、25万人から50万人の女性がレイプの被害にあったと推定しています。紛争下で、性暴力の被害に遭いやすいのは子どもです。紛争を生き抜

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