「猫だけは手放せない」食料尽きて残金60円 飼い主女性の決断は

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編集委員・清川卓史
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 退居を迫られているアパートの部屋。東京都の女性(56)は、もう2日間なにも口にしていなかった。2022年の年明け間もないころだ。

 隣には、愛猫みるくがいた。おなかをすかせ、力なくミャーミャーとないている。自分の空腹感より、元気のないみるくの様子をみるほうがつらかった。

 所持金は60円。

 1日1食だけ、1袋のインスタントラーメンを半分ずつ食べるなどして、1カ月ほど食べつないできた。

 しかし、それも限界だった。

 手持ちのお金で最後に購入したのは、人間の食料ではない。キャットフードだった。

 それも底をつきかけていた。

 スナックなどから声がかかれば出向き、ホステスとして接客して、日払いで賃金を受け取る。雇用契約や決まった勤務先がない仕事を続けてきた。

 部屋をシェアしていた友人が突然いなくなり、インターネットカフェやサウナなどを転々とする暮らしを余儀なくされた時期もある。泊まるお金がないときは、路上を歩き続けて夜を過ごした。

 知り合いの紹介で入居したアパートは、もとは物置として使っていた部屋を、家賃なし光熱費のみという条件で借りていた。身分証がなくて買えなかったスマートフォンも大家が貸してくれ、使用分の料金を支払っていた。

コロナ禍のなかで出勤日が急減

 コロナ禍。アルコール類提供自粛の影響もあり、出勤日は急減した。

 さらに昨年秋、持病の発作がおき、お店で倒れてしまった。仕事を続けるのは難しくなった。

 薬を飲めば発作はおさえられる、と聞いていた。しかし、医療費の自己負担が難しいため、通院もしていなかった。

 光熱費やスマホ料金も払えなくなった。大家からはついに部屋を出るように言い渡された。

 年末から都内各所で開かれている「年越し支援」の情報はスマホで目にしていた。しかし、新宿や池袋に出向く電車賃が、もうなかった。

 路上に出て、お金を得るためになんでもやるしかないか。そんな自暴自棄な気持ちにもとらわれた。

 ただ、家を失って厳冬期に路上をさまようことになれば、体の弱いみるくはどうなるのか――。

 その気持ちが歯止めになっていた。

 みるくと出会ったのは数年前…

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