性の多様性知って 自民が条例案提出へ 6月県議会

自民

川野由起
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 17日開会予定の埼玉県議会に、自民党県議団がLGBTQなど性の多様性への理解を深めるための条例案を提案する。性的少数者の置かれた現状や多様性の理念を広く県民に浸透させるねらいがある。市町村や企業の制度づくりにつなげていけるかが課題だ。

 県議団は昨年夏からプロジェクトチームを立ち上げ、当事者団体と勉強会を開きながら、条例案をまとめた。中心となった渡辺大県議によると、勉強会で当事者からは「毎日死ぬことを考えて生活をしていた」「性的少数者であることを職場で伝えたら、離職の勧告を受けた」という声を聞き、社会の無理解をなくしていくことが必要だと考えたという。

 条例案は「性のあり方が男女という二つの枠組みではなく連続的かつ多様」という認識に立ち、「性の多様性」が尊重され、すべての人が安心して生活できるような理解増進に取り組むことを基本理念に定めた。さらに「差別禁止」を盛り込み、性的指向や性自認を理由とした不当な差別を禁じるほか、本人の意思に反して暴露する「アウティング」の禁止についても明記した。自治体や事業者についても、性の多様性への理解を深め、施策を実施することなどを求めている。いずれも罰則はない。

 一方、自民党本部では昨年、超党派で合意した同趣旨の法案を、党内の意見をまとめきれず国会提出を見送った経緯がある。条例案をまとめるにあたり、県議団内でも、「時期尚早だ」という意見もあったほか、県民からは「伝統的な家族が壊れてしまう」「トランスジェンダーの女性のふりをして、男性が女性の浴場に入ってくるなど、犯罪が増えることにつながるのではないか」といった反対意見もあったという。

 こうした批判に対し渡辺県議は「現在とても大きな悩みを抱えている人がいる以上、まずその人の人権を守るという意味で条例制定に取り組んでいる。条例を作ってきた自治体で犯罪が増えたという事例も把握していない」と話す。

 県が2020年度に18~64歳の県民1万5千人を対象に実施した調査(5606人回答)によると、3・3%が、生まれた時の性別に違和感を感じていたり、同性を指向したりする性的少数者だった。「性的少数者でないものとしてふるまわなければならない」「偏見に基づく差別的な言動を見聞きする」といった悩みが多い。また、「自死の可能性を考えた」などと回答した人は65・8%で、性的少数者でない人の26・8%を大きく上回った。

 当事者支援団体のレインボーさいたまの会の加藤岳代表は「制度で人の意識が変わることがある。当事者は家族にさえも理解されないこともあるが、公的な制度ができることで家族や周りの人にも理解してもらう特効薬になればいい」と話す。

 県内では5月1日現在で、35の市町が同性のカップルをパートナーとして認めるパートナーシップ制度を定め、うち10自治体ではその子どもも家族として認めるなどファミリーシップ制度を定めている。埼玉りそな銀行や武蔵野銀行では、昨年から性的少数者のパートナーでも住宅ローンの連帯保証人になれるようにした。

具体策への落としこみ課題

 自民党県議団は、毎年のように議員提案条例を作ってきた。20年には家族などの介護や世話を担う「ケアラー」の支援条例が全国で初めて成立したほか、21年にはエスカレーターを立ち止まって使うことを義務づけた「エスカレーター条例」を制定。22年にはひきこもり状態にある人らを支援する「ひきこもり支援条例」が可決された。ケアラー支援条例については、全国の自治体に制定の動きが広がる。

 罰則のない理念条例には、実効性が乏しいという批判もある。

 地方議会や条例制定に詳しい明治大学政治経済学部の木寺元教授は「住民の代表である議員が、政策立案能力を競いながら、行政が作れない条例を提案するのは大切。具体的な行政サービスに落としこめるかが勝負で、議員提案をして終わりではなく、運用を監視していく責任が議会側にはある」と指摘する。(川野由起)