新興企業、学生の街に熱視線

河原田慎一
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 IT関連などのベンチャー企業が、京都市内に新たな拠点を設ける動きが広がっている。大学が多い「学生の街」で、人材確保しやすいことが、背景にあるとみられる。市も、初めて進出する企業向けの補助金を拡充するなどし、呼び込みを図っている。

 4月、四条通の繁華街にもほど近い、路地奥の町家を改装した貸しオフィスに、IT企業「じげん」(東京都)の京都オフィスがオープンした。同社は、留学や就活など学生のキャリア支援のほか、住宅関連の見積もり比較サービスなどを展開している。京都オフィスでは、学生のインターン6人を受け入れた。今年度中に社員とあわせて15人ほどに規模を拡大したいという。

 「学生が日本で一番集まっている都市で、学生と何ができるか考えた」。同社の平尾丈社長(39)は、京都市への進出を決めた理由を、そう話す。

 同社は、昨年の東京五輪で正式種目に採用された3人制バスケのプロチーム「ZIGExN UPDATERS.EXE(ジゲンアップデーターズドットエグゼ)」も設立。京都市を拠点に、プロリーグに参入した。チームには現役の同志社大学生や洛南高校出身の選手など京都ゆかりの選手が多く、同社の学生インターンも、チームの運営や広報に関わるという。

 同社の京都進出を後押ししたのが、市が4月に始めた補助金制度だ。アニメ制作などのコンテンツ産業や環境・エネルギー産業など、市が対象とする業種の企業が市内に事務所を開いて市内居住者を雇うと、1人につき最大月20万円を2年間(上限額年200万円)補助する。町家を改装したオフィスは進出企業に人気で、事務所を探す企業と不動産業者のマッチング支援もしている。

 市はこれまで、主に製造業向けの工場立地の促進策を進めてきた。一方で、町中の比較的小規模なオフィスで進出できる企業向けの補助金制度は無かった。

 新たな補助金制度の創設で、企業が進出し、市内在住者の雇用が増えれば、税収増にもつながると市は見込む。企業誘致推進室によると、すでに30件ほどの問い合わせがあるという。

 市によると、市内に通学する18~22歳の学生は約15万人。人口の約10%に当たり、人口に占める学生の比率は、全国有数の高さだという。「学生の街」でもあり、歴史・文化を身近に感じられる京都は、外国人エンジニアらにとっても魅力で、コロナ禍以前にも、IT企業の進出が相次いだ。2018年には、LINEが国内3カ所目となる拠点を開設。クラウド型会計ソフトなどを展開する「マネーフォワード」も、19年に開発拠点を設けた。

 市の担当者は「コロナ禍で働き方が変わる中、東京から離れて新卒人材が豊富な京都への進出が、再びチャンスと捉えられているようだ」と話している。(河原田慎一)