ロシア軍が完全掌握をもくろむウクライナ東部の最前線で戦闘に加わるウクライナ兵が、朝日新聞に現地の様子を語った。ロシア軍の戦車の砲撃で多くの仲間を失い、自らも2回負傷した。それでも祖国を守ると誓い、まもなく3度目の前線に戻る。
3月25日、ウクライナ軍兵士のアナトリー・クリュコフさん(23)は、東部ドネツク州リマンの南側に広がる国立公園内の森に配置された。
130人の部隊の一員としての任務は、ロシア軍の進軍を食い止めること。森の北方で支配地域を広げたロシア軍が、さらに森の方向へと進軍しようとしていたとされる。
3月31日午後5時半ごろだった。クリュコフさんは木々の根元に掘った塹壕(ざんごう)に身を潜めていた。
気温が低く、木はまだ葉をつけていない。どんよりとした曇り空が広がっていた。迷彩柄のフリースの上に戦闘服を羽織り、携行型の対戦車ロケット砲をそばに置く。ロシア軍に動きがないか、じっと観察する。
1本の木が視界を遮っているようで気になった。スコップを手に身を乗り出した瞬間、強い衝撃とともに意識を失った。
目を開く。地面の上に倒れていた。口の中は土の味がする。爆薬の臭いが鼻を抜けていく。徐々に意識が戻った。
ロシア軍の戦車から放たれた砲弾が、塹壕を直撃していた。クリュコフさんは4メートル先まで吹き飛ばされていた。顔は土まみれになり、出血していた。
急いで元の位置に戻った。「ボブ」と呼ばれていた同僚は腰から下がなくなっていた。即死したと一目で分かった。
クリュコフさんは衛生兵に救助されるまで5時間近く待った。この1回の攻撃で仲間12人が死亡し、20人余りが負傷していた。
「自分が死んでもおかしくなかった。死が隣り合わせなんだという現実を初めて実感し、ものすごく怖くなった」
搬送先の病院で撮影したエックス線画像で、顔に1センチもない小さな長方形の金属片が食い込んでいるとわかった。爆弾片らしい。手術で除去した。
4月11日、クリュコフさんは同じ森へと戻った。「ロシア軍をただでは済まさない。絶対にやり返してやる」
勇ましい思いで再び立った前線だが、戦いは厳しさを増していた。
仲間の死と自身の負傷に動揺しながらも、祖国防衛に燃えるウクライナ軍兵士のクリュコフさん。再び戻った最前線で待ち受けていたものとは。仕事や家族を持つ市民が、武器を手にして実感した戦争の現実を語ります。
ジャベリンで反撃も、ロシア軍戦車が現れ・・・
砲撃で大けがをしてからわず…
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