第111回秘密主義が隠すロシア軍の犠牲 兵士の家族、安否情報ウクライナ頼み

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 ロシアのウクライナ侵攻開始から3カ月が過ぎました。ロシア軍は、公式発表の死者数が欧米の予測よりかなり少なく、兵士による戦地への派遣拒否が相次ぐなど、多くの問題を抱えています。その背景に何があるのか。ソ連時代の1989年から、政府に兵士やその家族の権利を守るよう求める活動をしてきたロシアの非政府組織「兵士の母委員会連合」の代表で、人権活動家のワレンチナ・メリニコワさんに聞きました。

兵士の母委員会連合

兵士や将校の権利保護を目的に1989年に前身の組織が設立された。兵士らが、憲法や法律で定められた権利を行使できるよう政府や軍に要求する。軍内部のいじめや徴兵の問題などで、兵士やその家族に法的な助言をしてきた。平和・人権分野で「もう一つのノーベル賞」と呼ばれるスウェーデンの「ライト・ライブリフッド賞」を受賞している。

歴史を振り返れば

 ――ウクライナでのロシア兵の死者数の公式的な数字は、ロシア国防省が3月25日に発表した1351人から更新されません。ウクライナ側が主張する3万人以上との開きは非常に大きいです。なぜ、このようなことになっているのでしょうか。

 歴史を振り返れば、ロシア帝国やソビエト連邦、そしてロシアの政権が戦争の死者数を公式に発表したことはありません。唯一の例外が2008年のジョージアでの戦争でした。

 ウクライナ側は、ロシア軍が置き去りにした遺体を埋葬してリストをつくり、彼らなりの数字を持っています。戦争がいつか終われば、真実が判明するでしょう。

 ――欧米には、ロシア軍の前線が混乱し、行方不明者や戦死者を把握できていないと指摘する声があります。

 戦闘でロシア軍に生じる行方不明者については、作戦上の軍事機密が理由で明らかにされないと考えています。ロシア国防相の命令により、部隊の司令官は兵の損失が判明すれば、その日のうちに司令部に報告しなければならない。(戦死者をすぐに把握しているので)実際に行方不明者が発生する可能性はないのです。

 もう一つの理由もあります。兵器の性能が上がって犠牲者の数があまりに増え、遺体を回収し、故郷に送ることが難しくなりました。国際人道法では、戦闘後、捕虜の交換と遺体の回収を目的に短い休戦を宣言することが求められていますが、実行されていません。遺体と重傷者の収容が間に合わないんです。

 私たちの経験では、こうした事例が増えるほど、終戦後、長年にわたって遺体を捜し、身元確認をすることになります。今回は、かなり難しくなるでしょう。

アムネスティ、理解していない

 ――ウクライナ側は、捕虜や亡くなったロシア兵の写真や身分証などをインターネットなどで公開しています。

 戦闘の開始直後から、ウクラ…

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    駒木明義
    (朝日新聞論説委員=ロシア、国際関係)
    2022年6月10日16時13分 投稿
    【視点】

    ロシアの状況を知るのに役立つ、大変興味深いインタビューです。行方不明となったロシア兵を探す人たちの頼みの綱がウクライナ側のボランティアだという実情。ロシア側の対応が1990年代のチェチェン紛争よりも後退している面があるという実態。 一方で

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