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塩野義のコロナ飲み薬「緊急承認」なるか 国産初になるための課題は

有料会員記事新型コロナウイルス

市野塊、田中奏子
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 塩野義製薬大阪市)が開発する新型コロナウイルスの飲み薬の承認の是非が22日にも、審議される。迅速に審査を進めるための新たな「緊急承認」制度を初めて適用するかどうかが焦点となる。承認されれば、軽症者も使える飲み薬としては初の国産製品となる。ただ、現時点ではデータが不十分との指摘もある。

 「これだけウイルスの変異が繰り返される中、治験でどんな症状を重要視すればいいのか。模索しながら、苦しみながらやっているというのが正直なところだ」。5月、塩野義製薬の決算説明会で手代木功社長はこう打ち明けた。

「条件付き早期承認」で2月に申請

 塩野義が開発する飲み薬は、ウイルスの増殖を妨げる作用があるとして、軽症や中等症の患者への使用が想定されている。塩野義は2月、審査を省略できる「条件付き早期承認」の適用を申請した。

 ただ、厚生労働省側には適用に慎重な見方がある。

 申請時に出した12歳以上の約400人の治験データが、薬の有効性を明確に示せなかったことが大きい。ウイルス量の低下は確認できているものの、疲労感や発熱などの12症状の総合的な改善効果は明確ではなかった。もともと軽症者が多いオミクロン株の流行時に実施された治験のため、薬による改善効果を得にくかった可能性はあるが、すでに承認されたほかの飲み薬が入院リスクを下げるなどの効果を示していることに比べると、明確ではない。

 そもそも条件付き早期承認は、症例が集めにくい難病などの薬を想定した制度で、新型コロナの薬やワクチンに適用した例はない。

新たな制度「緊急承認」が後押し

 だが、今国会で改正医薬品医療機器法が成立し、「緊急承認制度」が成立したことで、局面が変わりつつある。この制度は、安全性はこれまで通り確認するが、有効性は「推定」できればよい。これまでよりも明確ではないデータでも承認できるとみられる。

 塩野義は4月24日に欧州の国際学会で、12症状のうち、鼻水やのどの痛み、発熱などの5症状では、統計的に意味のある効果が出たと発表。これらはオミクロン株の感染時に特徴的な症状であり、有効性として評価される可能性もある。

 厚労省の専門家部会では、緊急承認制度を想定して審議する見込みだが、この制度でも現在のデータでは十分ではないと評価され、承認されずに審議が続くことも否定できない。ただ、塩野義は2月に申請した後も治験を続けており、追加データも準備。審議までに、これまでのデータを補強できる可能性もある。

「使いやすい薬」への期待 政府は100万人分契約

 一方、政府の期待は大きい。政府は3月末、承認されれば100万人分を購入する契約を結んだ。4月末には「国内企業が開発する治療薬の実用化は重要な課題だ」(後藤茂之厚労相)として、塩野義の治験に62億円を支援。支援金はこれまでのものも含めると計82億円で、治験支援では製薬企業のなかで最も多い。

 期待の理由は、使いやすさだ。これまでに国内で実用化された薬として、米ファイザー製や米メルク製の飲み薬があるが、対象はいずれも重症化リスクのある人に限られていた。ファイザー製では、併用が禁じられている薬が約40種類もあり、使用数が伸びていない。インフルエンザタミフルのような比較的使いやすい薬は、世界でもまだない。

 実際に、英国の分析会社が実施した2022年度の抗ウイルス薬の市場予想では、すでに普及しているファイザー製72%、メルク製20%だが、塩野義の飲み薬も8%と一定の期待が示されている。

 塩野義も各国政府による買い上げが一定程度あると想定。少なくとも22~23年度には大きな需要があるとみる。22年度は開発中のワクチンと合わせて計1100億円の売り上げを見込んでいる。

有効性、安全性の透明性必要 識者は「冷静に」

 一方、塩野義の飲み薬は、動…

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