第17回20代の悩みテーマに記者サロン 人気ドラマ制作者と語る葛藤のわけ

寺島笑花
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 朝日新聞デジタル連載「働く20代のモヤモヤ WLBと言われても」では、今の働き方の延長線上に結婚や子育てといったプライベートとの両立が見通せない20代の記者が、働く同世代の声を全国で聞き、悩みや不安、その向き合い方を記事にまとめました。問題意識が重なると取材陣が注目したのが、ネットテレビ「ABEMA」オリジナルドラマ「30までにとうるさくて」でした。

 現代の東京を生き抜く29歳の独身女性4人組の恋、キャリア、性、友情を描くドラマをプロデュースした藤野良太さんをゲストに、連載を担当した熊本総局の堀越理菜、山口総局の太田原奈都乃両記者が語り合う、オンラインの記者サロン「不安、葛藤、焦り モヤモヤする20代」(参加登録すれば7月8日まで視聴可能)を10日、東京都内で開きました。記者サロンの主な内容をお伝えします。

 30歳を前にした男女から「痛いほどわかる」「刺さりすぎてつらい」と話題を呼んだドラマについて、藤野さんは、30歳前後の女性に取材を重ねた制作の経緯を振り返り、登場人物のモデルとなった男女のエピソードを紹介しました。

社会的な課題をエンタメに 東京で働く20代女性ターゲット

 ドラマ制作に込めた思いについて、藤野さんは「働いている女性は時間がない。時間を投資して、リターンを得られると思ってくれるドラマでなければ、見てくれないという問題意識がある」と語り、「東京で働く20代の女性たちが見るドラマを作るために、今の時代を捉えなければいけない」と考えたといいます。

 20代女性が抱える社会的な問題として、精子の個人間取引やセックスレス、お金やジェンダーの問題があるとし、「制度的なゆがみはドラマになる。ソーシャルイシューからキャラクターを作った」と説明。ただ、「ソーシャルイシューをそのまま(ドラマとして)出すのではなく、いかにエンターテインメントにするか。欧米はそうしたドラマを作るのがうまく、ジェンダーや性の問題をうまくコンテンツ化している。それを取り込んできたのが韓国ドラマだった」と話しました。

 「女性の潜在的な怒りを表現できたら良いと思った」と話した藤野さんに対し、堀越記者は「日頃、感じていることがあっても、それが怒りだと気づかなかったり、気づいても言えなかったり、考えるのをやめてしまったりすることも結構ある。全国でアンケートをした時、悩みや怒りを言えない人が多かった」と語りました。

 太田原記者は自身を振り返りつつ「言っても変わらないと思ってしまう。口に出したところで、どこまで変わるのだろうかと思う。言ったとき時のハレーションもある」とし、悩みを共有しにくい心情を明かしました。

「上からの制度」変えるために声を上げよう

 藤野さんは「働き方改革」や「女性活躍」といった言葉が先行し、現実とのギャップが生じている点について、「原因は制度を上から作っているから。しかも制度を作るのは男性が多い。下からの声で制度を作っていないから起きている問題かと思う」と指摘。若手記者の2人に対して「もっと声を上げた方が良い。ただ、言い方は重要。どういう伝え方をすれば、自分やみんなが思う良い方に変わるかを考えなければいけない。伝え方(の問題)はあっても、言った方が良い。友達同士、(職場の)同期同士で話すことは重要だと思う。まずはそれをおすすめする」と話しました。

 太田原記者は連載取材について、「普段は記事にしないような自分たちの日常的な悩みから取材して書いてみようとスタートした。『私もそうかも』と思ってもらうことが、(悩みの)解決のスタート地点になるのかもしれない」。堀越記者は「言語化してこなかった私たちの悩みや不安が表に出たからこそ、ヒントを得られた。小さくてもそれが一歩なのかなと思う。これからも揺れ動く感情や、生活の中で感じる課題と向き合って、みなさんと考えていきたい」と語りました。

悩みとの向き合い方 幸せだと感じる瞬間大事に

 記者サロンの後半では、参加者から寄せられた「モヤモヤ」に藤野さんが答えました。

 「同い年の知り合いとの生活の差を感じて苦しくなる」との28歳女性の悩みに対し、藤野さんは「人はみんな嫉妬深いと思うし、僕も嫉妬深いです」と応答。他の人がつくったヒットドラマを見て、「うらやましい」と思うこともあったが、30代半ばのとき、「これまでの人生を1年ずつ振り返って自己分析し、良いときの共通点を洗い出した」ことが転機になったと言います。「自分が幸せだと感じる瞬間を追求しようと思ったとき、人と比べなくなった。自分の人生にしかヒントは無い気がします」と語りました。

 選択肢が多様だからこそ迷い、選べない――。そんな、20代のモヤモヤに対し、藤野さんが大切にしているのは「縦の関係よりななめの関係」。会社の中でロールモデルを探そうとするのではなく、社外の先輩に「30歳、40歳の頃どうしていましたか?」と聞き、「こういう価値観、生き方があるのか」と学んでいくことが、20代から実践し続けている「解決法」だと語りました。(寺島笑花)

連載働く20代のモヤモヤ WLBと言われても(全16回)

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