若手が発言できる会社 かぎは「ひとつまみの塩」 東洋紡が挑む改革
フィルムや合成繊維などの化学製品を手がける素材大手の東洋紡。ちょうど140年前の1882(明治15)年に創立し、1931年には世界最大規模の紡績会社となった。繊維産業の衰退や世界同時不況などの大波にもまれたが、同社は大胆なコストカットによって、生き残りに成功した。昨年4月に就任した竹内郁夫社長は、そんな「サバイバル思考」からの脱却を掲げる。竹内社長が変革のキーワードに挙げる「まじめな雑談」とは――。
――サバイバル思考、とはどういう考え方のことでしょうか。
「今日を、なんとか生き残ろうという思考です。ギリギリの経費で仕事を回し、短い期間での結果や効率化を追い求めることです。1990年代後半~2000年代初期にかけて財務状況が苦しくなり、一丸となって赤字撲滅に取り組みました。ところが、危機を克服した成功体験によって、かえってその思考から抜け出せなくなりました」
「サバイバル思考だと、『理屈こねんと、とにかくやれ』となってしまう。『四の五の言うな』と。自分がやっている仕事の意味や存在意義がわからないと力が出ませんよね。20年度に起きた火災事故と品質不適切事案も、そうした企業風土が背景にあったのではないかと思っています」
――業績としてはこの10年間、ほぼ横ばいの状況が続きました。
「サバイバル思考の時は10年後のことは10年後に聞いてくれ、という状態になります。結果として、未来への備えが全くできていませんでした。環境やライフサイエンスの分野で社会に貢献できる、とんがった技術を持っているのに」
――環境や機能素材の分野で三菱商事と合弁会社を設立し、売上高を2倍以上に伸ばす目標を発表しました。
「過去20年間、この事業を…
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