上田洋子さん|ロシア文学者
ロシア軍撤退後のウクライナの都市で見つかった虐殺遺体に「ロシア軍は関与していない」、侵攻は「ウクライナの『ネオナチ』から住民を守るため」――。ロシア政府はしばしば、虚偽の情報や誇張した情報を発表します。これを国民は信じているのでしょうか。ロシア文学者の上田洋子さんに聞きました。
うえだ・ようこ
1974年生まれ。ロシア語通訳・翻訳者。2018年から「ゲンロン」代表。共著に「歌舞伎と革命ロシア」他。
――なぜロシア政府は、外から見れば明らかにうそと思われるような発表をするのでしょうか。
「プーチン大統領には、『歴史的文化的にロシアと一体であるはずのウクライナが、西側に支配されている。人々を救い、この文化圏を守らなければならない』という世界観があります。領土が欲しいゆえの建前ならば話は簡単です。しかし国外にも向けられた演説でその世界観を披露するところを見ると、本気で信じているようです。あり得べき世界の実現のためなら、誇張や粉飾も辞さない、ということでしょう」
――そうした発表をロシア国民は信じるのでしょうか。
「プロパガンダを見破るリテラシーがある人はそれなりにいるでしょう。ただ、留学や通訳の仕事で何度もロシアを訪れた実感では、全員がそうではない。侵攻を正当化する国全体の空気を信じたり、ある程度それに合わせたりする人が大半でしょう」
記事後半では、子どもたちに愛国や軍隊へのあこがれを植え付ける教育や、侵攻に反対する人たちがどのように意志表明をしているか、語ります。
国民的な俳優が愛国演説
――ロシア国民はどのような情報環境に置かれているのですか。
「プロパガンダはさまざまな…
- 【視点】
冷戦時代、「鉄のカーテン」というウィンストン・チャーチルがソ連の秘密主義を非難するために使った言葉があった。子ども心に、カーテンの向こうのソ連は謎に包まれ別世界のように感じていたものだ。インターネットが世界中を繋ぎ、どこにでもアクセスできる
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