第2回ヒーローらしくないアムロ 独裁国家「ジオン公国」に込めたもの

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聞き手・石川智也
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 漫画家・アニメ監督の安彦(やすひこ)良和さん(74)の歴史への深い造詣(ぞうけい)とまなざしは、1989年以降に発表した「虹色のトロツキー」「王道の狗(いぬ)」「天の血脈」「ナムジ 大國主」「神武」など、日本の近代史や古代史に材を取った作品に如実に表れている。いずれにも、東アジアの融和を目指す者と覇道を唱える者の対立が描かれているものの、双方ともに相応の理と、現実への屈服や理想への裏切りがあり、勧善懲悪の物語とは程遠い。

 矛盾と屈折を抱えた無名の人々の歴史群像劇としての物語と、「正義」に駆られた人間の愚かな所業に対する冷徹な視線は、キャリアの初期に作画監督とキャラクターデザインを務めた「機動戦士ガンダム」(79年)にも共通する。安彦さんの若き日の学生運動の体験が投影され、自ら「人生に深く刻印されている」とまで言う「ガンダム」。この化け物コンテンツは、いったいどのようにして誕生したのか。

【連載】ガンダムと戦争と歴史と 安彦良和が語る

「機動戦士ガンダム」の生みの親の一人である安彦良和さんに、新作公開を機にその世界観を存分に語ってもらいます。

SF冬の時代に生まれたアムロ

 ――「ガンダム」は宇宙モノでありながら地球周辺を舞台にし、人型の量産兵器「モビルスーツ」同士の戦いが繰り広げられるという設定で、従来の荒唐無稽なヒーローロボットアニメとは一線を画す作品でした。

 「原作者で総監督の富野由悠季(よしゆき)さんが一冊の企画書を書き上げてきたのは78年。『宇宙戦艦ヤマト』や『スター・ウォーズ』がヒットして、その二番煎じ的な作品がたくさん作られた第1期SFブームが起き、あっという間にしぼんだ、ちょうどそんな時期でした。SF冬の時代ですし、超高速恒星間飛行や宇宙人が出てくるようなスペースオペラなんてもう作ってもウケない。それに富野さんは現実主義者で、実はSF嫌いでした。でも、スポンサーなど色々な事情が絡んで、巨大ロボットものという線は外せない」

 「そこで彼は、アメリカの科学者が発表していた宇宙植民構想なら科学的に現実味もあると考えて設定に採用し、巨大ロボットを登場させるなら国家によって製造される人型兵器しかない、と構想していったわけです。彼の企画書はすこぶる難解でしたが(笑)、熱意と説得力に満ちていました」

     ◇

 〈「ガンダム」の作中舞台は、人口過多解消のため人類がスペースコロニーへの植民を始めて半世紀が過ぎた宇宙世紀。宇宙移民の一部が先鋭化した国家「ジオン公国」が地球連邦政府に独立戦争を挑み、開戦1カ月で総人口の半分が消え、戦争が膠着(こうちゃく)状態に陥ったところから物語が始まる。数多く制作された続編やスピンオフ作品も、基本的にはこの設定をベースにしている〉

     ◇

「ガンダムにテーマなんてありません」

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