映画界の製作者や劇場の支援、労働環境改善などに取り組む統括機関の結成をめざして、是枝裕和さん、諏訪敦彦さんら有志の映画監督らが「日本版CNC(セーエヌセー)設立を求める会」(action4cinema)を設立した。監督たちが参考として挙げるフランスのCNC(国立映画映像センター)や、韓国のKOFIC(韓国映画振興委員会)とはどんな組織なのか。会見で西川美和監督と深田晃司監督がそれぞれの特徴について語った。
フランスは映画チケットの10%強を業界に還元
《フランスCNCについて 西川美和監督の話》
私は日本国内でしか映画を撮ったことがない。海外の映画祭に参加すると、海外の予算は、小さなホームドラマでも桁が一つ二つ違うと実感させられる。日本の状況との差を実感しても、現実として日本の映画にどう改善していくか、現実感がもてないままでいた。(海外での製作経験がある監督らに)今回、改めて話を聞くと、フランスや韓国の支援機関の多岐にわたるサポートが、自国の映画文化を支えていると分かった。
CNCは、フランスの文化省の監督下にある強い権限をもった機関。第2次世界大戦後、戦争で傷んだフランス映画界の復興を目的に設立された。76年の歴史があり、2019年のデータではフルタイムだけで451人が働いている大きな組織。
CNCは、潤沢な資金力で映画業界全般に対してサポートする。映画制作の資金援助はもちろん、それ以前の企画開発からのサポート、脚本を書く人にも、撮影が終わって完成した後も、配給、宣伝、劇場、海外展開に対しても、広くくまなくサポートしていく特徴がある。
それだけの資金援助には莫大(ばくだい)な財源が必要。どこからきているかというと、実はフランスの場合は、国家予算の配分ではなく、業界内での利潤を循環させて成り立っている。映画館で観客が支払うチケット料金のうち、10・72%は直接CNCの財源になっている。フランスはチケット代の平均が日本円で約960円ぐらい。1人が映画館で1本みると、100円強ぐらいが自動的に映画に関わっている人や将来作られていく映画のためのお金として役立っていく。
このシステムを1948年には取り入れ、ずっと続いているが、時代の移り変わりとともに台頭する映像メディアが出て、そのたびにCNCは徴収の域を広げている。86年にはテレビの規制緩和で有料民営放送が出来たときに、テレビでも映画をかけるということでテレビ局全体の売り上げから徴収を始めた。90年代以降はさらに広げてビデオ、オンデマンド販売、ゲーム業界からも徴収を行うようになった。そこから得た財源を助成金という形で、映画だけでなく、それぞれの業界に振興支援として還元していくシステムをとっている。
近年は配信が映画の「脅威」…