第1回スマホに残された「大量殺傷」のファイル、男が26人の命を奪うまで
「生活保護を受けられないでしょうか」
2017年2月、中年の男が1人、大阪府内の女性のもとを訪れた。人当たりは良く、言葉遣いも丁寧。谷本盛雄容疑者だった。
クリニック放火殺人事件
昨年12月17日午前、大阪市北区の雑居ビル4階のクリニックに男がガソリンをまいて火を付け、患者やスタッフら26人が一酸化炭素中毒で犠牲となった。大阪府警は3月、通院していた谷本盛雄容疑者(当時61)を殺人や現住建造物等放火などの疑いで書類送検した(容疑者死亡で不起訴)。
谷本容疑者は11年、長男を出刃包丁で切りつけ、殺人未遂罪で懲役4年の実刑判決を受けて服役した。生活相談などに応じる女性のもとを訪れたのは、出所して2年が経ったころだった。
谷本容疑者は女性に暮らしぶりを説明した。
仕事探しても「前科で断られる」
唯一の収入源だった持ち家の家賃が途絶えたこと。入居していた賃貸マンションの家賃が払えなくなり、退居したこと。半年ほど前から大阪市浪速区の1日1300円の簡易宿泊所に滞在していること――。
預貯金は1114円。消費者金融から50万円を借り入れていた。
大阪市のクリニックで26人が犠牲になった殺人事件で、容疑者のスマホには、別事件で服役して出所した後に、孤立と困窮の中で放火に向かう姿が残されていました。事件から半年。容疑者の事件までの日々を追います。
大阪府警などによると、谷本…
- 【提案】
本件は、被疑者が死亡したため、裁判での真相解明ができない。しかし、このような悲惨な事件が起きた原因・動機を明らかにし、社会が共有することは、今後の再発防止のためにも、必要だろう。 今回の記事は、その課題を考えるうえで、とても大事な情報
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