第6回ククルス・ドアンは原点回帰 ニュータイプ論超え「本当のガンダム」

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聞き手・石川智也
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 歴史漫画の道へと進み高い評価を得ていった安彦(やすひこ)良和さん(74)を1995年、またもや古傷をえぐるようなニュースが襲った。

【連載】ガンダムと戦争と歴史と 安彦良和が語る

機動戦士ガンダム」の生みの親の一人、安彦良和さんに新作公開を機にその世界観を存分に語ってもらいます。

 かつて自分たち新左翼運動の闘士が陥った選民思想のわなに、オウム真理教の信徒たちもとらわれたのではないか――。連合赤軍事件をほうふつとさせるこの大事件はしかも、「サブカルの時代」の鬼子とも言える側面をもっていた。

 自らの作品の影響を否定できないと感じた安彦さんは、「足を洗った」はずの「機動戦士ガンダム」に、再び向き合うことになる。

続編世界に立ちこめた「不全の空気」

 ――漫画家専業になってから10年以上経った2001年、「ガンダム」をリライトした漫画「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」の連載を始め、さらにその後、アニメ化するにあたっては総監督を務めました。

 「僕の言う『サブカルの時代』は『脱政治の時代』という意味だったわけですが、そこから急速に進んだのは『脱政治の断絶』とでも呼ぶべきものです。特殊な言語と趣味、関心のタコツボに自閉し、コミュニケーションそのものを放棄し、いたずらにいら立って他者に攻撃的になるような行き詰まり感。それはある意味で、新左翼運動の末期に漂っていた雰囲気に似たものでした」

 「1980年代末に世を騒がせた幼女連続誘拐殺人事件で、まるでオタクが犯罪予備軍であるかのように見なされていましたが、それに対して同感だと思ってしまう自分がいました。しかもあろうことか、そうしたコミュニケーション不全の空気は、僕がメインスタッフとしてゼロから立ち上げた『ガンダム』の続編世界とそのファンたちに、最も濃く立ちこめていました」

 「しかも、テーマも善悪もない、と言っていたはずが、その後のシリーズ作品で『ニュータイプ』というテーマがどんどん大きな比重を占めていくことにも、僕は大きな違和感を感じていました」

 〈ニュータイプとは「機動戦士ガンダム」の終盤で登場したモチーフ。人類は宇宙進出によって進化し認識力や洞察力が拡大するという思想を革命家のジオンが唱え、ジオン公国の主導的な思想になったという設定がなされた。作中では、モビルスーツを自在に操る特殊な感応力の持ち主として描写されたり、仏教的な悟りの境地としてイメージされたりと、定義は明確にされず、さまざまな解釈や想像の余地を残すかたちで描かれた〉

ガンダムで道誤った人間、いたかもしれない

 ――その後のシリーズ作では…

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