対ソ融和「生き方が違う集団との共生」 生存かけたフィンランド外交

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聞き手・大内悟史
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 北大西洋条約機構(NATO)加盟を申請したフィンランドはロシアと長い国境で接し、ロシアによる支配や過酷な戦争の歴史をもつ。北欧諸国を中心とした国際政治史の大家、百瀬宏・津田塾大学名誉教授は、軍事的中立を掲げてきたフィンランド外交の伝統を転換する動きに驚きを見せながらも、冷静に状況を見極めるべきだと説く。

ももせ・ひろし 1932年生まれ。専門は北欧の地域から見た国際関係史研究。著書に『ソビエト連邦と現代の世界』『小国外交のリアリズム―戦後フィンランド1944-48年』など。

 ――フィンランドとスウェーデンがNATO加盟の動きを進めています。

 北欧外交史を長年研究してきた者にとって、両国のNATO加盟は非常に大きな変化だ。気持ちの上で衝撃を受けるが、こういう時には一歩踏みとどまり、知識を総動員して事態を冷静に検討する必要がある。

 まず脳裏に浮かぶのは、北欧諸国の外交的伝統は、決して理念的な中立思想から生まれたものではないということだ。

 スウェーデンの中立政策は、近年でこそ外交上の理念として賛美される傾向があるが、実際に成立するまでの道のりは平坦(へいたん)ではなく、安全保障のための厳しい外交過程そのものだった。

 ましてやロシアと1300キロに及ぶ国境を接しているフィンランドの場合、ソ連と第2次世界大戦中に2回も戦火を交えた後に、相互不信に満ちた関係を少しでも好転させ、緊張と戦火のリスクを緩和させようとするさまざまな努力が戦後になってようやく実る経緯をたどった。

 言ってみれば、スウェーデンとフィンランドはそれぞれ与えられた条件のもとで、自国の生き残りを懸けたまったく別物の印象を与える対外政策を展開してきたのであり、北欧諸国の外交はそうした各国独自の外交政策複合体だった。

 ――フィンランドとスウェーデンの違いとは。

 フィンランドは対ソ・対ロ関…

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