第4回自らの「挫折」乗り越え…コミュニティー支援で起業した男性の挑戦

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森本美紀、石川春菜
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 仕事を終えた午後8時。窓越しに、レインボーブリッジの夜景が浮かぶ。

 池崎健一郎さん(42)は東京・有明の自宅マンション最上階、33階にある共用施設・バーラウンジで、グラスを傾けていた。

 「ブリリアマーレ有明タワー&ガーデン」に入居して間もない2011年夏のことだ。

 08年に竣工(しゅんこう)した1千戸超の巨大マンション。最上階はすべて共用で、ジムやプール、キッチンスタジオ、テラスもある。

 エンジニアとして働き、妻と2人暮らしだった池崎さんは、充実した共用施設に「知り合いができたら」と期待し、入居した。

 しかし、この夜、ラウンジにいるのは池崎さんとバーテンダーだけ。

 「何のための共用施設なんだろう」

 施設が利用できる深夜1時近くまで、ほかに訪れる人はいなかった。

 翌12年、管理組合の理事に立候補した。めざしたのは「毎日何かがあるマンション」。周辺に飲食店が少なかったことに着目し、バーラウンジで昼食も提供してもらうようにすると、利用者は5倍になった。住民が教えるヨガ教室を開くと満員に。ライブは事前に告知し、施設使用料の割引制度も導入するなど、33階まで足を運ぶ仕掛けを工夫した。

 自らの交友関係も広がった。

 管理組合の活動や共用施設の利用時に知り合った住民とゴルフや外食に出かけた。

 「職場ではつながれない年齢層の違う様々な人と出会い、困ったことがあったら相談し合おうと話せるようになりました」

 今月5日、その33階で開かれたイベント。産地直送の豚肉の試食や無料のピアノコンサートなどに1日で延べ約300人が訪れ、あちこちに交流の輪ができた。

 そこに、いまは別のマンションに住む池崎さんの姿もあった。

 ここで管理組合の役員を6年務めた経験を生かし、21年に株式会社「新都市生活研究所」を立ち上げた。マンション管理組合と、イベントを提供する事業者との仲介などを通し、コミュニティーづくりを支援する。

 この日のイベントも、同研究所が管理組合と業務委託契約を結んで開いたものだ。

コミュニティーづくりをめざしても、うまくいかないマンションもあります。外から支援しようと立ち上げられた会社がある一方で、多くのマンションを開発してきた不動産会社にも、コミュニティーづくりに取り組む動きがあります。その背景は――。記事後半で紹介しています。

 池崎さんが起業に踏み切った原点には、ここの役員としてのある「挫折」があった。

 月2回、出勤時間前のマンシ…

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