原発事故回避へ逃し続けた機会 東電に「唯々諾々」で明確な対策なし

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編集委員・佐々木英輔
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 国の責任が問われた原発事故の集団訴訟で、焦点となったのが2002年に公表された地震予測「長期評価」をめぐる対応だった。地裁や高裁では、長期評価にもとづいて対策を取るべきだったかどうか、その信頼性が争われてきた。

 しかし最高裁判決では、長期評価にもとづいても原発事故は防げなかったとして、その判断を避けた。果たして国に責任はないのか。対策を取らせる機会はあったのに、9年近くにわたって逃し続けてきた場面の数々とともに振り返る。

 02年7月31日、後に東京電力福島第一原発事故の責任をめぐって大きな論争となる見解が公表された。

 国の地震調査研究推進本部による「長期評価」。東北地方の太平洋岸で起こる様々な地震の可能性について、地震学の専門家の議論を経てまとめたものだ。推進本部(地震本部)は、関西で大地震が起こると思われていなかった阪神大震災の教訓から、地震の研究成果を社会に発信するために発足した組織だった。

 翌日の朝日新聞は「津波地震、発生率20% 今後30年 三陸―房総沖」との見出しで、地図とともに報じた。

「40分間抵抗」で唯々諾々

 津波地震とは、地震そのものの規模に比べて大きな津波を伴う地震。三陸―房総沖のどこでも、つまり福島沖でも、津波地震が起こりうるというのが長期評価の内容だった。

 三陸沖や房総沖と違って、福島沖での発生例は歴史記録になく、同じ年に見直したばかりの東電の津波想定には入っていなかった。原発の規制を担っていた経済産業省原子力安全・保安院は東電を呼び、長期評価にもとづく津波の影響を計算するよう求めた。

 「40分間くらい抵抗した。結果的に計算するとはなっていないが――」

 8月5日にあった保安院との会合後、東電の担当者はこんな報告メールを関係者に送っている。東電は、海域によって津波地震の起きやすさが違うかもしれないとの学説も持ち出し、計算を渋った。

 もし計算していれば、10メートルを超える結果が出たはずだった。その後も保安院と東電のやり取りは続いたが、さらに計算を求めることはなかった。

 「不誠実ともいえる東電の報…

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