食べログの独禁法違反認定 口コミ評価点の計算方法めぐり 東京地裁
大手グルメサイト「食べログ」で、チェーン店であることを理由に不当に評価点を下げられたとして、焼き肉・韓国料理チェーン店を展開する「韓流村」(東京)が食べログを運営する「カカクコム」(東京)に約6億4千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、東京地裁であった。林史高裁判長(笹本哲朗裁判長代読)は、食べログの独占禁止法違反(優越的地位の乱用)を認め、3840万円の支払いを命じた。
食べログは約82万店について、計4千万件以上の口コミを元に独自の「アルゴリズム(計算手順)」で5点満点の点数をつけるが、詳しい算出方法は明らかにしていない。判決は、デジタルプラットフォームのアルゴリズム運用や透明性の議論に影響を与えそうだ。
訴状によると2019年5月、韓流村が運営する21店舗の評価点が平均約0・2ポイント、最大で0・45ポイント下落した。同社はチェーン店の点数を一律に下げる不当なアルゴリズム変更が行われて客が減ったと主張した。
判決は、原告にとって食べログは事業経営に大きな影響力があり、著しく不利益な要請をされても受け入れざるをえない「優越的地位」にあると位置づけた。
そのうえで今回のアルゴリズム変更は「チェーン店である原告に不利益を与える取引」で、公表されていた評価方法に照らして「あらかじめ計算できない不利益」を与えるものだったと認定。アルゴリズム変更は優越的地位の乱用にあたるとし、落ち込んだ営業利益の一部の賠償を命じた。
食べログの規約は会員店には損害賠償責任を負わないと定めているが、判決は「優越的地位の乱用にあたりうると認識して変更しており、故意または重大な過失がある」と述べ、規定は適用されないと判断した。
カカクコムは「不当な判決と考えている」とし、控訴したと明らかにした。(田中恭太)
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独占禁止法に詳しい九州大准教授の平山賢太郎弁護士の話 公正取引委員会がこれまで違反調査で正面から切り込んでこなかったアルゴリズムの運用について、裁判所が違反と判断したのは先駆的で驚いた。
デジタルプラットフォームに頼らざるを得ない一事業者が、民事訴訟の形で疑問を投げかけてアルゴリズムの概要を開示させ、違反判決を引き出した意義は大きい。公正さを疑われれば訴訟になり、開示せざるをえない可能性があることがわかり、今後プラットフォームは不透明さを減らす丁寧な説明を行うようになるだろうし、行うべきだ。
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〈アルゴリズム〉 データを処理するのに使う計算手順のこと。例えば検索サイトの検索結果や、通販サイトのおすすめ商品は、各社が利用者の関心に近くなるよう独自のアルゴリズムを使って表示させている。
フェイスブックが投稿の表示順を決めるのに、挑発的で質の低い投稿を優先するアルゴリズムを使っていたことが内部告発されるなど、使い方や透明性が問われる事態も起きている。
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- 【視点】
点数に対する信頼が揺らぐ一方、民間企業のサーバーに社会インフラともいえる膨大な店舗データがストックされていることは、見逃せません。 これは、アマゾンが国会図書館に匹敵する書籍情報を扱っているのと同じ状況だとも言えて。 ネットのサ