遺児を追い詰める値上がりラッシュ 2年半ぶり街頭募金へ

滝沢隆史
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 病気や災害などで親を亡くした子どもたちを支援する「あしなが育英会」(東京)の奨学生や支援者らが18日、長野県内5カ所で2年半ぶりとなる街頭募金活動を再開する。2019年まで毎年春と秋に実施してきたが、新型コロナの影響で、自粛を余儀なくされていた。長引くコロナ禍で生活に苦しむ子どもたちは増えており、より一層の支援を呼びかけている。

 公立諏訪東京理科大3年の木本渚(なぎさ)さん(20)=茅野市=は、18日に軽井沢駅前で募金を呼びかける。ボランティアスタッフとして活動に携わり、準備に奔走してきた。

 大学では、子ども食堂を運営するボランティアサークルに所属。1年ほど前、育英会の奨学生だったサークルの先輩から誘われ、あしなが学生募金事務局に入った。「それまでは、あしなが育英会のことはよく知らなかった」という。

 だが、コロナ禍で募金活動ができないまま、実感が持てずにいた。昨秋、育英会が実施した奨学生の保護者への聞き取り調査に参加し、3人の子を育てる親から話を聞いた。「受験の年だけ子どもを塾に通わせたと聞き、衝撃を受けた」。今年2月、学生事務局の長野群馬ブロックの統括責任者に立候補し、活動に力を入れてきた。

 木本さんは「コロナ禍で遺児家庭の生活は本当に苦しく、進学をあきらめる子どもがいることも知ってほしい。募金活動ができず、くやしい思いもあった。ぜひ協力してほしい」と呼びかける。

 育英会によると、長引くコロナ禍の影響で奨学生数は大幅に増えており、昨年度は全国で過去最多の8429人に上った。県内でもコロナ前の18年度の58人から、昨年度は124人に増えている。

 同会が4~5月、奨学生の保護者らに実施した緊急調査には切実な声が寄せられた。県内の50代の女性は「物価が上がり続け、収入が安定しない中、毎日が綱渡り。不安を娘に悟られないように、自分を奮い立たせる毎日です」と回答。同会は「コロナ禍を必死に耐えてきたが、値上げラッシュで追い詰められている」という。

 コロナの感染状況が落ち着きつつあることに加え、増加する奨学生への支援の必要性が高まっていることをふまえ、育英会が全国で募金の再開を決めた。

 18日の街頭募金は午前10時から。長野駅善光寺口(午後6時まで)、上田駅お城口広場(同)、軽井沢駅デッキ上(同5時半まで)、松本駅お城口(同5時まで)、上諏訪駅バス総合案内所前(同4時半まで)の各所で。(滝沢隆史)

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