高齢化する団地に若者を…きっかけは「コミュニティー」 家賃割引も

石川春菜
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 高齢化が進む団地で、「コミュニティー」をきっかけに若い世代を呼び込もうとする動きがある。全国各地で団地を運営するUR都市機構が力をいれるのは、多世代交流だ。若い世代に対する家賃の割引などに加え、魅力的な街づくりにも取り組んでいる。

 URは全国に計1459団地を持つ。

 2020年度の調査では、居住者の平均年齢は52・7歳。高齢化率は36・9%で、全国平均の29%を大きく上回る。

大学と連携 学生が暮らすまちに

 1968年に入居が始まった高蔵寺ニュータウン(愛知県春日井市)では、現在、近くにある中部大学の学生約40人が暮らす。大学と市、UR中部支社が15年度に本格的に始めた「地域連携住居」の利用者だ。

 学生は、自治会が主催する町内行事を手伝うなど「地域貢献活動」をする代わり、URの賃貸住宅に通常の2割引きで住める。

 エレベーターがない建物で4階以上になるが、家賃は2DKで3万円ほど。中部大によると、春日井市内のワンルームマンションの相場は4万円ほどで、格安になっている。

 きっかけは、地域での活動を通じた学生の成長を狙った大学側の提案。中部支社の担当者は「世代間の交流が生まれて団地が活性化している。住民からも好評です」と話す。

 中部大の学生だった豊田稜介さん(24)はこの春に就職するまでの5年間、ニュータウンに暮らした。公園の草取り、防災訓練や小学校の運動会の準備、餅つきなどに参加したという。4年ほど前には、道に迷った認知症の高齢女性を自宅近くまで送り届けた。

 いま、地元の静岡県で高校の教師として働く。和太鼓部の顧問にもなり、地域の祭りで演奏するなど、イベント参加も多い。そんなときには、学生時代に参加していた地域活動を思い出すという。

 「学校も、地域と関わることが大切と言われている。学生時代に地域活動が経験できてよかった。これからにもいかしていきたい」

 同じく、制度を利用して春までニュータウンで暮らした上野左京さん(24)も「地域活動に参加するなかで、さまざまな人との会話のスキルが身につき、就職活動にも役立った」と振り返る。

交流拠点づくり、アドバイザー… 各地で工夫

 URが、高齢化を意識したコミュニティーづくりの検討を始めたのは、2013年度のことだ。外部の有識者の意見も取り入れ、高齢者だけでなく、若者世帯や子育て世帯も含めて「多様な世代がいきいきと暮らし続けられる」ことをめざすとした。

 ひばりが丘団地(東京都西東京市東久留米市)では、12年の建て替えの際に、あえて長屋形式の2階建て住宅を残した。内部を改修し、交流の場「ひばりテラス118」に。六つのコミュニティースペースやカフェがあり、ベビーマッサージ講座やアロマ教室など、若い世代も楽しめるイベントを開く。

 日の里団地(福岡県宗像市)でも、開発から50年を機に、団地1棟を改修。21年5月、「ひのさと48」という交流拠点とした。

 担当者は「若者が高齢者の見守り支援をしたり、高齢者が子育て支援をしたり。多世代がいることで豊かなコミュニティーが形成できる。地域が活性化して、空き部屋問題の解消など、持続可能性にもつながる」と話す。

 URの団地には「生活支援アドバイザー」がいるところもある。08年に始まった制度で、高齢者が安心して暮らし続けられるよう、住民の見守りや生活相談に応じてきた。今年3月時点で、全国の約220団地に150人ほどがいる。自治会の役員らと連携し、住民同士の交流イベントを開くことも。昨年度は約2200件のイベントに関わった。アドバイザーは今後も増やしていく予定だ。(石川春菜)