裸踊り、「ボケ木戸」、黒塗りの報告書…警察と闘った父の6年8カ月
兵庫県警機動隊員だった木戸大地さん(当時24)が2015年に自殺したのは先輩らのパワーハラスメントが原因だとして、遺族が県に約8千万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が、22日に神戸地裁である。県警側はパワハラを認めず、全面的に争っている。
パワハラか、指導か
訴状などによると、09年に県警に採用された大地さんは、12年に機動隊へ配属。翌年の技能試験の際に「同僚に解答を見せた」などと先輩警察官にカンニングを疑われ、行為を認めるよう迫られた。自殺の3カ月ほど前にはこの先輩から「ミス一覧表」の作成を命じられた。また、別の上司には、任意参加の朝練に出なかったとしてスクワットをさせられた。
遺族側は、一連の行為はパワハラにあたり、うつ病を引き起こしたと主張。自殺を図ったのも、先輩から当日の午前中、ミス一覧表の再提出を執拗(しつよう)に命じられたことが原因だと訴えている。
一方で県警側は、先輩らの行為に「パワハラは存在しない」との立場だ。
カンニングとミス一覧表をめぐる行為については、ミスを指摘して改善させるためのもので「不合理とはいえない」と主張する。
スクワットなどは「職務に必要な体力の向上を図るため」としている。機動隊は災害時の人命救助も担うため「より強靱(きょうじん)な体力や精神力が必要」とし、組織の特殊性も強調する。
自殺と先輩らの行為とに因果関係はなく、県警側が自殺を予見するのは困難なため賠償の責任はない、として棄却を求めている。
先輩警察官は口頭弁論で、自殺前に「ボケ木戸」と書いたふせんを書類に貼ったことなどを認め「ミスが事故につながると自覚してほしかった」と述べた。
積もり積もった 県警への不信感
息子の死から6年8カ月。遺族の怒りややるせなさは、行為に関わった人物だけでなく、県警自体にも向けられている。
木戸大地さんの父・一仁さん(73)は毎朝、広島県内の自宅の仏壇に手を合わせる。数珠はつけない。
「つけたくないんです。葬儀でも持たなかった。大地の死を認めたくない気持ちが、まだどこかにある」
自殺を図る2日前、一仁さんに電話をかけてきた。
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