苦肉の策、実は「最先端」 放牧酪農、3代目が気づいた持続可能性
福田祥史
茨城県の圏央道を千葉・成田方面に向かう途中、利根川手前の開けた低地に牛が放し飼いにされているのを見かける。本州では非常に珍しい放牧酪農だという。なぜ放牧を? 牧場主が語ったのは、意外な事情だった。
稲敷市の最南部、利根川のすぐ北を流れる新利根川沿いに、その牧場はある。「新利根協同農学塾農場」という。上野裕さん(53)が妻の知子さん(53)、息子の匠さん(27)と家族3人で、搾乳牛約30頭と和牛の母牛約10頭などを飼う。
許可を得て、放牧中の牛たちに近づいた。ザクッ、ザクッ。舌と歯で草を引きちぎる音が響く。想像していた「のんびり草をはむ」というよりは、歩き回りながらひたすら食べ続けている感じだ。人間がそばにいても気にする様子はない。
そのまま販売できない生乳 「もったいない」けれど
上野さんが放牧を始めたのは…