紙のまち富士市の新たな挑戦 新素材CNF活用の製品次々

菅尾保
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 製紙業のまちとして発展してきた静岡県富士市が紙で培った技術を生かし、木から取り出す新素材セルロースナノファイバー(CNF)を使った製品開発に力を入れている。CNFは軽くて強度のある性質や保水性、保形性など様々な利点をもっており、建築資材や樹脂製品、食品や化粧品など幅広い分野での用途が見込まれる。今月には同市として初の「CNF拠点」も開設。研究・開発、人材育成などの一層の進展が期待されている。

 「CNFを使ったものの実用化、製品化が進んできている。これらを富士市ブランドとして推進し、富士市の産業の底上げにつなげたい」。10日開かれた「富士市CNF連携拠点」の開所式。CNF推進を市政運営の柱の一つに掲げる小長井義正市長は、新たな拠点の誕生に大きな期待を示した。

 この拠点は県の富士工業技術支援センター(富士市大渕)内に設けられ、「ふじのくにCNF研究開発センター」や静岡大学の「CNFサテライトオフィス」などと協力し、研究開発や人材育成などを担っていく。これまで同市のCNF事業へのアドバイザーを務めてきたCNF研究の国内第一人者、東京大学の磯貝明・特別教授の研究室も設けられ、月に1回程度、研究や情報交換のための会合も開かれるという。

 開所を記念して講演した磯貝・特別教授は「CNFは二酸化炭素を吸収する植物由来の素材で、利用拡大により地球温暖化防止に貢献できる可能性がある」と解説。富士市における可能性については「CNFの原料・基盤技術となる紙パルプが主産業で、実用化の技術的蓄積があり、拠点となる条件がそろっている」と指摘したうえで、「既に実用化・製品化の成功事例があり、富士市と静岡県、静岡大学との連携、情報交換による実用化加速が期待される」と話した。

 市は2019年、産業政策課内に「市CNFプラットフォーム」を設置。企業間の情報や技術の交流、技術と商品のマッチングなどを行ってきた。その中からはCNFのもつ「軽さと強さ」を利用した自動車用タイヤや「芯なしトイレットペーパー」、保湿性や保形性を利用して「ふっくら、しっとり」を生み出した和菓子、抗菌保持力を強化したティッシュペーパーなどの実用化を実現。少なくとも十数種類の品目で製品化されているという。

 製紙大手の日本製紙(東京)は富士市内の工場内にCNF強化樹脂製造設備をつくるとともに富士革新素材研究所でCNF利用の研究に力を注いでいる。先に挙げた自動車用タイヤでの実用化のほか、どら焼き、ケーキ、うどんなどの食品や様々な樹脂製品に実用化されており、将来的にはCNF強化樹脂による「軽くて高強度」な自動車ボディーの実現も目指している。

 野々村文就・研究所長は「用途が広がれば、市場規模も拡大する。デジタル化で紙の需要が減少する中、新たな事業の柱の一つに育てていきたい」という。

 市CNF・産業戦略担当の平野貴章主幹は「CNFは環境問題と新たな経済創出の両立を可能にする素材。これを育て、地域経済活性化と持続可能なものづくりのまちを目指したい」と話している。(菅尾保)