乃木坂46や嵐などの楽曲を手がけてきた作曲家の杉山勝彦さん(40)は、19日にデビュー30周年を記念した全国ツアーを終えたMr.Childrenに大きな影響を受けた1人だ。乃木坂46への提供曲「きっかけ」を気に入ったボーカルの桜井和寿さんが2016年のライブでカバーを披露したときのエピソードや、ミスチルと小林武史さんの影響を受けて作った楽曲にまつわる秘話、ミスチルが多くの人に愛される理由について、たっぷり語ってもらった。
――まずはMr.Childrenとの出会いについてお聞かせください。
中学生のときにミスチル好きの友達がいて、「これ、すごく良いから聞いてみなよ!」とカセットテープを貸してくれたんです。それには「CROSS ROAD」「クラスメイト」「車の中でかくれてキスをしよう」「星になれたら」など、けっこうツボを押さえたミスチル楽曲を入れてくれていました。
当時、音楽のことは全然分かっていなかったのですが、どこか洗練されていて、歌詞もちょっと大人びている感じがして、すぐ夢中になり、そのテープをすり切れるぐらい聴いたのを覚えています。それから少し経って「名もなき詩」というシングルがリリースされ、それが生まれて初めて買ったCDになりました。
当時のミスチルの楽曲って、今聴いたとしても全然古くない音だと思うんです。小林武史さんのアレンジ・プロデュースからくる普遍性もあったのかもしれませんが、ぱっと聴いて違ったんですよね。あとはやっぱり桜井和寿さんの声ですね。ああいうエッジ感が強いシンガーの方って、今なら優里くんとかたくさんいると思うんですけど、あの当時は斬新で、すごくきらびやかな声に聞こえたんです。
――杉山さんはミスチルの歌詞を全曲覚えて、楽器の全パートをコピーされたそうですね。
高校に入学して、音楽をまじめにやろうと決めたとき、Mr.Childrenが僕にとっての音楽の教科書でした。ミスチルの楽曲は中学生の頃から依然として大好きでしたが、「何か他のバンドとは違うよな」というのがありました。コード進行や転調も含めて、他の人たちより複雑すぎないけど、ときにオシャレな瞬間があって、表現のグラデーションが広かったんです。「これを勉強したらいいんじゃないか」と思って、ストーカーみたいに追いかけました(笑)。
最初に衝撃を受けたバンドがMr.Childrenだったのは、すごくラッキーだったと思います。作曲家やアーティストとして活動していくときに、色んな音楽を吸収したり、要素を取り入れたりしたのですが、その骨格がミスチルで、自分の心の奥底に一番初めに感動をくれた人たちが、自分のやりたいことからもはずれていなかったんです。好きな音楽が売れる音楽だったというのはすごく幸せなことだったと思いますね。
Mr.Childrenはロック、ポップスのバンドという印象があると思いますが、桜井さんってフォークもめちゃめちゃ通っている方だと思うんです。たとえば「深海」の「So Let’s Get Truth」とか、フォーキーな要素が見える瞬間がいっぱいあります。Mr.Childrenというバンドの中に、すごく多様な音楽のエッセンスが詰まっているんですよね。だから、そこを深掘りすることで、色んな音楽を自然と吸収させてもらったのかなと思います。
すぎやま・かつひこ 1982年、埼玉県生まれ。作詞、作曲、編曲家。フォークデュオ「TANEBI」のギタリスト。手がけた楽曲に、乃木坂46「君の名は希望」「ありがちな恋愛」、欅坂46(櫻坂46)「青空が違う」、けやき坂46(日向坂46)「沈黙した恋人よ」、嵐「冬を抱きしめて」、家入レオ「ずっと、ふたりで」などがある。
――ご自身の中で、特にここはミスチルの影響が色濃いと思う部分はありますか?
正直、Mr.Childrenがあまりに王道すぎて、強すぎて、作曲家としては「ミスチルっぽいね」と言われるのは、たぶん厳しかったと思うんです。僕自身も別にそれを意識してもいなかったのですが、レコード会社の方などに僕が作る曲を「ミスチルっぽいね」と言われたことは一度もありませんでした。むしろ、「ルーツは何なの?」と聞かれたときに、「クラシックとMr.Childrenがそれに当たると思うんですけど」という話をしたときに、「意外!」みたいな感じで言われることが多かったんです。
その後、(乃木坂46に提供した)「きっかけ」を桜井さんに歌ってもらえたので、「もう出していっても大丈夫だろう」と思って、それからはMr.Childrenに影響を受けているような曲も普通に書くようになりました。
――桜井さんが「きっかけ」をカバーされたと聞いたときはどんな気持ちでしたか?
まず、友達からめちゃくちゃ…
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