記者サロン「アニメ監督が生まれるトコロ」、ラノベ作家はどう見た?

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 「CGアニメコンテスト」を主催する団体「DoGA」代表の鎌田優(ゆたか)さんを講師に招き、6月5日に開かれた記者サロン「アニメ監督が生まれるトコロ~自主制作CGアニメの世界~」。鎌田さんの話を聞いて、ライトノベル作家の蝉川夏哉(せみかわ・なつや)さん、批評家の黒嵜想(くろさき・そう)さんはどう考えたのか。会場の朝日新聞大阪本社アサコムホールを訪れた2人に、エッセーを寄せてもらった。

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独学でもCG制作できる時代に  蝉川夏哉さん

 せみかわ・なつや ライトノベル作家。1983年生まれ。大阪府出身。大阪市立大学文学部卒。宝島社刊の代表作『異世界居酒屋「のぶ」』はシリーズ累計500万部。コミカライズ、アニメ化もされ、現在WOWOWで実写ドラマのseason2が放映中。

 CGムービーというと豆腐のように角ばったポリゴンの組み合わせを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。私が高校生の時分にラジオ部部室のパソコンでつたないながらにいじっていた20年前には、確かにその印象で間違っていなかった。

 新海誠監督の「天気の子」や、少し古くなるが「アナと雪の女王」はもちろんのこと、現在絶賛上映中の「シン・ウルトラマン」に至るまで、今やCGは映像表現の中核にあり、水か空気のごとく当たり前に私たちの日常で目にするものとなっている。

 しかし、全ての技術がそうであるようにCGムービーにも海のものとも山のものとも知れぬ曙(あけぼの)の時代があった。鎌田優氏率いるDoGAは大阪の地でその黎明(れいめい)期から多くの人々が自由にCGムービーを制作できるようにとプログラムを配布し、普及活動に尽力してきた。不肖、私もその功徳にあやかった一人である。

 30年前には研究室と好事家が数式を画像化することしかできなかったCGムービーが今では誰でも簡単に表現の方法として選ぶことができるようになったのは、鎌田氏はじめ在野の人々の手弁当の努力が多くの後進を育てたことによる。今回の講演会で上映された様々な年代の作品はその足跡であり、それぞれの時代の最先端のきらめきの残照であった。

 かつて芸術は一部の優れた才能の持ち主によって維持、発展させられるものであったが、今では誰でも絵筆を握ることができ、鍵盤で旋律を奏でることができる。専門学校に通わずとも、独学でアニメーションを創(つく)ることのできる時代なのだ。

 CGムービーもまた同様に、一部の人から多くの人への開放の歴史をたどっている。終盤、小学生からCGムービーを創る人になるために何をすればいいのかという質問があった。幼い頃からこの道を志す人があれば、欧米に後塵(こうじん)を拝しつつあるこの業界の未来も悲観し過ぎることはないだろう。

技術の前進、推移する題材  黒嵜想さん

 くろさき・そう 1988年生まれ。批評家。京都精華大学非常勤講師(サブカルチャー論)。音声論を主題にした論考、企画を多数手がけている。各種ポッドキャストで「ボイスメモ(3600±600)」を配信中。

 数多くの著名アニメ監督をCGアニメコンテストによって発掘した「DoGA」設立のきっかけは大学のコンピュータークラブだった。メンバーが開発したCGアニメ制作ソフトはパソコン雑誌の付録としてフロッピーディスクで配布され、大きな反響を呼んだという。

 鎌田優氏の講演では、ソフトを使用した当時の作品も上映された。抽象的な空間を幾何学的な立体がさまよう映像は、作品であると同時に、ソフトの機能を試行するシミュレーションであった。DoGAにおいて当初、コンテストの主催は制作ソフトのリリースと並走していたプロジェクトであったことは極めて示唆的である。CGアニメ(制作)にかつてかけられていた期待とは、めざましい発展段階にあったコンピューターの技術的な前進を確かめる、「技術試行としてのシミュレーション」であったのだろう。

 続いて上映されたのは、CGアニメコンテスト受賞作の数々だ。興味深いのは、近年の作品になるにつれて、従来の平面的なアニメーションを効率的に達成するようにCGを利用するものが散見されたことだ。3DCGをアニメのセル画のように見せる「トゥーンシェーディング」なる手法も紹介された。

 これらは、CGアニメにかけられた期待が「平面的なアニメーションの再現技術としてのシミュレーション」に読み替えられていく過程なのではないか。作品の題材もその傾向に呼応するように、異界や近未来の仮想から個人的なノスタルジーに焦点が推移しているように思えた。2000年にグランプリを受賞した新海誠監督の作品は転換点となったのだろう。

 技術の試行から、再現の技術へ。CGでアニメを描く意義は揺るがない。「アニメーション」なる営み自体が、「生命(アニマ)」の印象を模倣し、その定義を拡張し続ける広範なグラフィックシミュレーションであるからだ。CGアニメにおいて顕著なのは、制作環境の変容が表現の生態系に与えた影響だ。本講演はその一つを追う端緒となった。

上映作品一覧 (一部冒頭のみ上映)

 田村鞠果「Final Deathtination」

 井上涼「赤ずきんと健康」

 鳥取大学電子計算機研究会「TEAM ART」

 鎌田優「冬の終わる夜」

 渡辺哲也「超獣ロボ リューセイバー」

 TVアニメ「ロスト・ユニバース」(CGパート)

 ロマのフ比嘉「ONE DAY, SOME GIRL」

 新海誠「彼女と彼女の猫」

 吉浦康裕「水のコトバ」

 山岸剛朗「絶対無双麻雀マン」

 杉本晃佑「これくらいで歌う」

 安田現象「メイクラブ」

 川尻将由「ある日本の絵描き少年」

 伊藤瑞希「高野交差点」