40年越しの「大玉」、23日プレデビュー 期待詰まる

須田世紀
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 40年越しで山形県が開発を手がけた「大玉」のサクランボが23日、プレデビューする。いま主力の佐藤錦が初めて結実して今年で100年。節目の年に始動する「大型新人」(吉村美栄子知事)には、海外市場攻略なども含め、大きな期待が詰まっている。

 ブランド名は「やまがた紅王」。つやがある鮮やかな紅色に色づき、サクランボの「王様」の風格があるなどとして、2019年6月に県民などの公募を経て決まった。

 最大の特徴は果実の大きさだ。佐藤錦は中心が2L(25ミリ以上)なのに対し、やまがた紅王は3L(28ミリ以上)~4L(31ミリ以上)。一粒が500円玉からメープルリーフ金貨並みになるという。

 糖度は20度以上で佐藤錦と似ているものの、酸味は少なめで上品な甘さが味わえる。果肉がしっかりして日持ちするのも、既存品種と異なる特徴の一つだ。

 今年の販売予定量は約6トン。山形県産サクランボの例年の出荷量の1%にも満たない「限定品」となる。山形市内で23日にイベントを開き、お披露目する。具体的な販売方法や買える場所は公表されていないが、県園芸大国推進課によると、同日から店頭に並ぶ。

 価格は「市場の原理で動く」(同課)と多くを語らないが、「大玉は消費者の受けがよい。希少価値、話題性もある」として高値を期待する声が大きい。

 県が大玉を目指して品種改良を本格的に始めたのは1978年。米国産サクランボが初めて輸入された年だった。「大きくて味も良く、生産者には驚異だった」。県農業総合研究センター園芸農業研究所の石黒亮所長(59)は、当時の危機感を振り返る。

 所員が棒状の道具をつかって、一つ一つめしべに花粉を付けていく地道な作業で交雑させ、有望なものを探った。その195番目の組み合わせが「山形C12号」。97年に交雑を始め、のちにやまがた紅王と命名される新品種だ。収穫期が比較的早い「紅さやか」と米国品種で粒の大きさが特徴の「レーニア」、紅秀峰を祖先に持つ。

 文字どおり結実したのは、04年6月7日。研究所内の園地で一粒口に含んだ石黒さんは「これはいい。万人に受ける味だ」。直感した。食べる前から「見た目にほれました」といい、手応えがあった。

 301個採れた種から127本の苗木が育ち、それぞれの果実を食べ比べた上で、1本の「原木」を選んだ。その後は原木から接ぎ木をし、「クローン」を増やした。現在は約2万6千本が、厳密に登録管理された約2400の県内生産者によって育てられている。

 農家にとっても収入面だけでない利点がある。収穫期が佐藤錦と紅秀峰の間に位置し、出荷量の凸凹を減らし、一定の水準に保てる。また、慢性的な労働力不足に陥っているなかで、一粒の果実が大きく収穫作業の負担が減るのも大きい。日持ちするので海外にも持っていきやすく、関係者は新たな市場の開拓にも使えるとみる。東アジア各国・地域で商標登録を出願済みだ。

 一方、足元の課題は品質のばらつきだ。小さくても2L、着色面積が50%以上といった基準を満たさなければ、やまがた紅王として出荷できない決まりだが、栽培方法が農家に十分に定着しているとはまだ言えないという。県が手引を整備しているところだ。

 石黒さんは「佐藤錦などと並び称され、君臨するブランド品に育って欲しい」と話した。(須田世紀)