雪のグラウンド…バットをストックに持ち替えて 兵庫・但馬の村岡高
【兵庫】「弁当忘れても傘忘れるな」。雨や雪の多さから、但馬にはそんな言葉が伝わる。特に冬は雪が深く積もり、グラウンドで野球ができなくなることも。そんな時も但馬の球児たちは雪を生かした練習や地域の除雪作業のお手伝いをするなどして、工夫を重ねてきた。
「きょうは筋トレとクロスカントリー、どっちにする?」
村岡(香美町)では毎冬、練習前に部員らの間でそんな話が飛び交う。
標高400メートル以上の山々に囲まれた豪雪地帯に位置する。12月から3月ごろまでの間、グラウンドは真っ白になる。長靴を履いて簡単なキャッチボールができる程度で、外で実践的な練習をするのは難しい。
その代わり、背丈ほど積もった雪は恵みにもなる。教師がスノーモービルで雪面を整えると、そこはあたかもスキー場。球児たちはスパイクの代わりにスキーを履き、バットをストックに持ち替え、グラウンドに繰り出す。
週に2~3回、30分から1時間ほど、1周約200メートルのグラウンドをスキーで回り続ける。平らな雪面を全身を使い進むこの練習「クロスカントリー」は、冬の定番練習として続いてきた。練習メニューを考えている角野緑久心(りょくしん)主将(3年)は「足腰や体幹が鍛えられる」とねらいを話す。
香美町の南隣の養父市出身。だが、「村岡の雪にもクロスカントリーの練習にも最初は驚きました」。
冬の間も外で練習ができたらと思うことはある。でも、次第に「考えてもしょうがない。自分たちのできることをしよう」と前向きに考えられるようになった。
ハンディはアドバンテージに変えられる。クロスカントリーは、ただ平地を走るよりもきつい。藤野浩司監督によると「スキー板の幅がアルペンの板より細く不安定になるため、バランス感覚が必要になり、体幹も鍛えられます」。
角野主将も「冬を越えるたびに体力がついたなと感じるようになりました」。田野俊太選手(2年)のように冬を通して筋力がつき、打率が5割を超えるようになった部員もいる。
但馬は山などの自然環境に恵まれ、山岳スポーツが盛んな地域でもある。2016年には、高さ約4メートルのボルダリング施設も体育館にできた。村岡の部員たちはこれを登り、腕や足のトレーニングをすることもある。「きついというより、楽しみながら鍛えています」
全校生徒は135人。この夏は新たに加わった1年生3人を含め、選手10人で兵庫大会に挑む。春まではスキー部など他の部活の「助っ人」の力を借りており、全員が野球部員で挑む公式戦はこのチームでは初めてだ。
藤野監督は「雪で練習ができないのは苦しい。グラウンドが使えても人数がいないので連係プレーの練習がなかなかできない。それでも何とか楽しんでもらえたら」と願う。