「偶然」から生まれる経営戦略…安部若菜と早川夢菜が見つめる未来

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構成・阪本輝昭
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「NMB48のレッツ・スタディー!」経済編⑦

 人気投資漫画「インベスターZ」にNMB48メンバーが入り込み、経済知識や理解を深める「NMB48のレッツ・スタディー!」経済編。ともに現役大学生で、経済学を学ぶNMB48の安部若菜さん(20)と早川夢菜(ゆな)さん(19)が、「インベスターZ」の登場人物たちと一緒に「お金と経済」について考えます。(構成・阪本輝昭)

安部若菜さん、小説を出すって本当?

 神代圭介(道塾学園「投資部」キャプテン):「安部さん、小説を出すんだって?」

 安部若菜:「あっ、どうしてそれを?」

 財前孝史(道塾学園「投資部」部員):「SNSで宣伝していたじゃない。自分で」

 安部:「参ったなあ。『作家先生』なんて呼ばないでくださいね?」

 神代:「どんな小説なの?」

 安部:「『アイドル失格』ってタイトルなんですけど。KADOKAWAから11月18日発売予定です」

 早川夢菜:「アイドル失格?」

 安部:「アイドルに恋愛感情を抱く『ガチ恋オタク』と、メジャーデビューをめざす『地下アイドル』の恋と成長を描いてるの」

 早川:「刺激的なタイトルですね……」

 安部:「タイトル決めが一番大変だったなあ……。ああでもないこうでもないと、100個くらい候補をノートに書き出したよ」

 早川:「本を書く時間なんかあったんですか? 先日まで、吉本新喜劇とNMB48がコラボしたミュージカル『ぐれいてすとな笑まん』に出演していましたよね」

 安部:「ちょっとずつ書きためてたの。実はまだ執筆中なんだけどね……」

 神代:「落語もできて、株式投資もして、今度は小説も書くアイドルか。『株式会社安部若菜』の経営多角化が進んでいるね」

 安部:「企業の一生も人に似ているといいますよね。人と同じように生まれ、青春期を過ごし、成長する。でも、歳月を重ねるうちにだんだん会社も市場も成熟し、新たな市場も見いだせず、そこから衰退が始まる……」

 神代:「企業の一般的な成長サイクルといわれるものだね」

 安部:「私という『企業』が現状で満足してしまったら、それは成長の停止と衰退期の始まりを意味するんです。多少無謀でも、何か新しいことに挑んでいかないと……」

 財前:「新たな挑戦の連続が、常に『成長期』に身を置き続けるひけつだと」

 安部:「そうです」

「創発的企業」であり続けるためには?

 早川:「わかぽんさんはすごいなあ。しっかり戦略をもっていて……。何か綿密に練り上げられた人生計画書があって、そのプラン通りに生きているんですか?」

 安部:「そんなわけないでしょ。仮にそんなものを作ったとして、明日はどんな風が吹くかわからない芸能界。何の意味があるの?」

 早川:「だって、そうとしか思えない」

 安部:「いや、決めているのはただ一つ。『創発的企業』でありたいってことだけだよ」

 早川:「創発的企業……。最初からガチガチに事業計画や本業を固めるんじゃなくて、走りながら考える、偶然の出会いを大事にして成長を図るタイプの会社ってことですか?」

 安部:「まあ、そんな感じ。作家業は、最初から意図したものじゃなくて、私のコンプレックスから偶然生まれた産物なんだよ」

 財前:「どういう意味?」

 安部:「私、SNSの使い方があまり上手じゃないからさ。バズる(多くの人に拡散される)投稿とかできないし。ほかのメンバーはすごいなあ……と思いながらみてるよ」

 財前:「それがなぜ作家業につながるの?」

 安部:「SNSが苦手な理由の第一は、私、文章が長いんだよね。短い文字数でテンポよく……っていうのが苦手なの。でも、ブログなどにじっくり時間をかけて書いた文章は褒めてもらえることが多くて」

 神代:「へえ。それならとことんまで長い文章を書いてやろうと……」

 安部:「アイドルを推すファンの心理をリアルに描き出した小説『推し、燃ゆ』が芥川賞に輝きましたよね。作者の宇佐見りんさんは私の同世代。そこに励まされたし、同時に、『推しとは何か』という根源的な問いかけに、アイドルの側から答えを探してみるのも面白いと思ったんですよ」

笑顔を「禁止」されたら…アイドルを続ける?

 早川:「わかぽんさんにもコンプレックスがあったなんて……。私も他人と自分を見比べてしまう性格なので、勉強になります」

 安部:「そりゃあるよ。ゆななんのようにいつも全力の笑顔でいられる子がうらやましいよ。私、笑顔にもあまり自信がないからさ」

 早川:「私のニコニコ笑顔、好きですか?」

 安部:「うん」

 神代:「笑顔といえば……。安部さんたちが出演した『ぐれいてすとな笑まん』って、お笑いや笑顔が禁止された暗黒の世界を舞台にしたコメディーじゃなかったっけ?」

 安部:「そう。その暗黒時代に生きる芸人さんやアイドルたちの葛藤を描いた作品です」

 財前:「アイドルがステージで笑顔を見せちゃいけないの? じゃあみんな無表情で歌ったり踊ったりするわけ? それは怖いな」

 安部:「そう。ある種の社会風刺作品だったと思うの。コロナ禍も現実にあったし、私は、全くの空想世界だとは思えなかったな」

 早川:「笑顔が完全禁止されたら、私はアイドルを続けられる気がしないです。自分も笑顔になれないし、ファンの笑顔も見られないんですよね? やりがいが感じられない」

 安部:「笑いを封印してステージに立てば、国がチケットを全部買い上げてくれて収入は保障される。でも従わなければステージに立てない……。どっちを選ぶかという究極の問いを劇中で私たちは突きつけられたわけ」

 神代:「もしそんな事態が現実に起きたら、安部さんは笑顔禁止の条件を受け入れてステージに立つ? それとも舞台から去る?」

 安部:「私はステージに出る方を選びます。やりがいはもちろん大事だけれど、『経営者』としてはまずは事業の継続を……」

 早川:「えっ! 本当にですか?」

 安部:「実は、楽屋で実際にそういう話題で盛り上がったの。一緒に出演していたNMB48のメンバーも『出る派』と『出ない派』に分かれていたよ」

 早川:「信じられない。私は『出ない派』です」

 安部:「私は、事業を継続させてこそ、その先に選択肢が生まれると考える方なんだよね。『やりがい』だけに頼って息長く抵抗を続けていくのは難しいと思うし……」

 早川:「うーん」

戦争や災害を乗り越えて…創業100年以上の企業は4万社

 安部:「それなら私は、真顔のなかに意味合いや感情を乗せる努力をしたいなって。無表情をあえて徹底的に貫いて、笑顔禁止の異常さを浮かび上がらせるのも一つの表現だと思うし」

 神代:「ある日突然、外的な要因で事業の前提や基盤が壊される事態は実際に起きうるからね。『株式会社安部若菜』はそれでも事業を続ける、と」

 財前:「日本には創業100年を超す老舗企業が4万社以上もありますよね(2021年、東京商工リサーチ調べ)。その間に戦争も大きな災害もあった。事業継続をかけた『究極の選択』がそれぞれにあったんでしょうね」

 安部:「でも、正解は一つじゃないと思う。『出ない派』の考えが間違っているとは思いません。私はどんな壁にぶち当たっても簡単にはあきらめたくない、自分自身が思考停止には陥りたくないってだけで」

 早川:「そうかあ……。わかぽんさんなりの覚悟なんですね。生意気なことを言っちゃった」

 安部:「それにさ……」

 早川:「?」

 安部:「真顔で歌って踊ってお給料をもらえるなら、ちょっとラクでよくない?」

 早川:「わかぽんさん、アイドル失格……!?」

 安部:「冗談だから!」

企業にも、人と同じような成長サイクルが…宮宇地先生の視点

 追手門学院大の宮宇地俊岳・准教授が各回のカギとなる経済用語を解説します。

     ◇

 人の一生を四季になぞらえて、青春、朱夏、白秋、玄冬と呼ぶことがあります。

 企業にも、人と同じように成長サイクルがあります。

 時間の流れと売上高の推移に基づき、事業を立ち上げて間もない創業期、事業が急成長する成長期、事業が安定する成熟期、売り上げが大きく縮小する衰退期――の四つの段階に区分されます。

 技術革新やライフスタイル・価値観の変化などにより、これまでの事業へのニーズがなくなることが起こります。

 企業が衰退期に直面し、淘汰(とうた)されず生き残るためには、変革に取り組むことが重要です。

 再び成長のステージに入るためには、新技術の開発などはもちろんですが、経営戦略がその鍵となります。なお、経営戦略とは、企業がおかれた競争環境の中で、保有する経営資源の制約のもとに、経営理念を達成するために策定された経営方針・計画をいいます。

 経営戦略を立てる上で大切になる視点をいくつか。

 一点目。ライバルが多いほど、企業が獲得できる利益水準は低くなるため、既に多数の競合他社がいる既存の市場から、市場の境界線を引き直し、競合他社がいない新たな市場を創造することです(W・チャン・キムとレネ・モボルニュのブルー・オーシャン戦略)。

 既存の市場を血みどろの海という意味でレッド・オーシャン、それに対して新しく創造するライバルのいない市場をブルー・オーシャンと呼びます。

 この戦略は、既存の製品・サービスのコンセプトの変更などを伴います。既存の製品・サービスを構成する要素に対して、「取り除く・思いきり減らす・大胆に増やす・付け加える」といった四つの大胆なアクションをとることでライバルのいない市場(ブルー・オーシャン)を切りひらく戦略です。

 例えば、眼鏡ブランドのJINS(株式会社ジンズ)は、コンタクトレンズの普及によって売り上げの減少が続く眼鏡業界において、眼鏡は高価格で重みがあり、目の悪い人が買うものというイメージから、低価格で色彩が多様でブルーライトカットなどの機能を備え、目が悪くない人も買うおしゃれアイテムへと市場境界線を引き直し、新たな市場を創造しました。

 QBハウス(キュービーネット株式会社)は、散髪に付随するシャンプーやマッサージなどのサービスを取り除き、その一方で、立地の利便性、短時間(隙間時間の活用)、安さを重視し、10分間1200円のヘアカット専業店という新たな市場を創造し、大きな成長を果たしています。

 二点目。既存の技術や経営資源を生かして、既存市場(顧客層)とは異なる新たな市場に既存製品とは異なる新製品を投入する形で新規事業を立ち上げ、新たな成長サイクルを生み出すことです(イゴール・アンゾフの多角化戦略)。

 総合印刷大手の大日本印刷株式会社は、デジタル化に伴う脱紙媒体の流れや出版不況の中にありながら、印刷技術、フィルム上のデザインを資材に転写する技術などを応用して、商品パッケージや建材、さらには軽量化が求められる電気自動車の曲面樹脂ガラスなどの事業を手掛ける企業へと変化を遂げています。

 三点目。偶発的に直面した潜在需要に対応し、行動と学習を積み重ねながら、適宜修正を加えて戦略へと練り上げていくことです(ヘンリー・ミンツバーグの創発的戦略)。

 通常、経営戦略は、企業が事前に策定し、意図したとおりに展開していくことを想定していますが、意図していないところから潜在需要を把握し、戦略が生まれるケースもあります。最初から明確に意図した戦略とは異なります。行動の一つひとつが積み上がり、そのつど学習する過程で修正され、戦略の一貫性やパターンが形成されます。

 ホンダ本田技研工業株式会社)はアメリカ進出にあたり、当初は自信のある250cc、305ccのバイクを売り出そうとしました。しかし、アメリカ人は大型バイクで長距離を高スピードで走行するため、自信があったはずのホンダのバイクが頻繁に故障します。

 他方で、さほど期待をかけていなかった50ccのバイクがおもちゃ的な乗り物、遊びの足代わりとして人々の目にとまります。そのことを学習し、50ccバイクの販売拡大にかじを切ったところヒットし、これをアメリカにおけるホンダのメイン製品としました。

 絹製品販売会社として創業した株式会社サンリオは、小物雑貨などを扱う中で、花柄などの可愛いイラスト付き雑貨がよく売れることを発見。キャラクター開発に注力するようになりました。ハローキティ、ポムポムプリンのような人気キャラクターを抱え、今ではライセンス料収入に基づくビジネスを展開しています。

 このような視点は、衰退期にとどまらず、企業のさまざまな成長段階でも役に立つでしょう。

     ◇

 みやうち・としたけ 197…

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