線状降水帯予測、まずすべきことは 気象予報士・防災士にきいた

聞き手・伊藤和行
[PR]

 半日程度先に「線状降水帯」による豪雨の可能性があると呼びかける情報を気象庁が発表したら、発表された地域にいる人はまず、何をすべきか。防災士でもある気象予報士の山本由佳さん(57)に聴いた。

 ――線状降水帯の発生予測情報が発表されました。この地域では、どれほど雨が降り、どんな危険がありますか?

 「発表対象となった地方のどこかで、土砂災害や洪水災害を引き起こすほどの非常に激しい雨が降るかもしれません。大雨災害発生の危険度が急激に高まる可能性があります。この呼びかけがあったからといって、必ずしも線状降水帯が発生するわけではありませんが、どこかでそのような大雨となる可能性が高い状況です」

こまめに気象情報の確認を

 ――予測された発生の時間まで、まだ半日程度あります。どう行動すればいいですか?

 「半日程度前から心構えを一段高めていただくことがこの情報の目的です。まずは、いつもより大雨災害が起きる可能性が高い状況だ、ということを頭の片隅に置き、テレビやスマートフォンなどで気象情報をこまめに見るようにしてください。その上で、川の近くや土砂災害の危険のある地域にいる人は、避難することになるかもしれない、と考えてください。家族や近所の人らと相談したり、自治体の避難情報を注視したりしながら、必要になればすぐに避難できる準備を整えてください。この段階で、お金、貴重品、着替え、飲食品など避難所に持って行くものを再度確認しておくのもいいでしょう」

 「一方、福祉施設や医療機関、学校など要配慮者がいる施設の職員のみなさんは、この半日弱の猶予時間で、『いざという時のシフトを考えておこう』とか『備蓄品、特に非常用電源は大丈夫?』などと確認にあてるのもいいと思います。この呼びかけは広い範囲を対象としたものです。気象レーダーで雨雲の動きを見たり、地元気象台が発表する気象情報などを確認したりしてください」

 ――「自分がいる地域が、土砂災害や洪水などの警戒が必要な地域かどうかはどう確認すればいいですか」

 「自治体が公開しているハザードマップを確認してください。色がついていれば何らかの災害のリスクがあります。ただしハザードマップは万全ではないため、がけや川が近くにあれば土砂災害や洪水の危険があると考えましょう」

 ――予測が発表された時点ではすぐに避難しなくてもいいのですか?

 「そうですね、予測発表時点では自分がいる地域が大雨になるかどうかはまだわからないので、すぐに避難ということではないです。気象庁の過去の事例の検証では、情報が発表されても線状降水帯が発生したのは4回に1回程度です。ただ、大雨になる確率は高いので、気象情報をこまめに確認してください。実際に線状降水帯が発生したら短時間にものすごい大雨となり災害の危険度が高まるので、その前にすぐに避難できる準備をしてほしいのです」

 ――避難する際に気をつけることはありますか?

 「避難先は、自治体の指定する避難所のほかに、安全な親戚・知人の家やホテル・旅館など複数の候補を考えておくとよいです。もし車での避難を考えているなら、早めにすべきでしょう。避難所の駐車場が空いていなかったり、途中で渋滞にあったりすることも考えられます。避難所では、夏の暑さ対策に加え、新型コロナの感染症対策も必要になるため、消毒液やマスクなど自身の分は用意しましょう。感染をおそれて避難所に行くのをためらう方もいるかもしれません。自治体でも避難所の感染症対策を進めていますので、他の避難先が思い浮かばない方はためらわず避難してください」

 ――災害の危険がない地域にいる人はどうすべきですか?

危険地域の家族に呼びかけを

 「停電や断水が起きる可能性には備えてください。会社や外にいる人は列車が止まる可能性もあるので、早めに帰宅することも考えられます。もし親ら家族が災害の危険がある地域に住んでいたら、直接連絡して避難を呼びかけることも大切です。家族からの呼びかけは効果が大きいです」

 ――備えに必要なものを買いに行くことはどうでしょうか?

 「まだ時間的に余裕があれば、安全を確認したうえで、水や食料などを買いに行くこともいいと思います。普段から、3日分の備えをしておくことが大事です。断水や下水が使えなくなることで、トイレにも困るかもしれませんので、非常用の携帯トイレを購入したり、簡易トイレを作る方法を調べたりするのもおすすめです」

 ――そもそもなぜ、気象庁は発生予測を半日前に発表したのですか?

 「近年、線状降水帯の発生で大きな被害が出る豪雨災害が相次ぎました。(早朝の大雨特別警報発表で多くの人が避難できず犠牲になった)2020年7月の熊本県球磨川の水害も大きなきっかけになりました。これらの教訓から、線状降水帯というキーワードを使い、危ない状況にあることをできるだけ早く知らせたい、と気象庁は考えたのだと理解しています。一方で、線状降水帯だけが大雨災害を引き起こす現象ではない、ということもよくご理解いただきたいと思っています」

 ――予測が外れることもあるのですね。

 「そうですね。仮に予測が外れても、その分、災害に対する心構えや備えを『練習できた』とプラスに考えれば、次につながります。日本は自然豊かである分、災害が起きやすい国です。常日頃の備えが、自分の命を守ることになります」(聞き手・伊藤和行)

        ◇

 山本由佳さん 横浜市在住の気象予報士、防災士。2009年に女性気象予報士を中心とした団体「サニーエンジェルス」(日本気象予報士会所属)を立ち上げ、お天気教室や防災講座などを開いてきた。NPO法人「環境防災総合政策研究機構」の主任研究員を務める。