ロードバイクで、もっと遠くへ 人口減の山里で子どもたちに吹いた風

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上野創
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 コロナ禍のもとで、ロードバイクに乗る子どもが急増した町が、京都の山あいにある。町の魅力にひかれた男性が「いろんな体験活動の拠点に」と作った施設は、子どもたちが集うサードブレイス(家でも学校でもない居場所)となっていた。

 朝からの霧が晴れて水田に山が映る。5月の土曜日、田んぼ脇の木造の建物に、ロードバイクが5台、6台とやってきた。

 カーブしたハンドルを握って前傾姿勢で乗る、タイヤの細い自転車だ。

 中学1年生と小学6年生、男子も女子もいる。慣れた手つきで車体をバイクスタンドに置き、水の入ったボトルを手に屋内へ入ると、机を囲んでカードゲームで遊び始めた。

 その後もサイクルウェア姿の子どもたちが次々と扉を開ける。

 やがて「行くか」「どこへ?」という声で立ち上がり、再びペダルを踏み込んで消えていった。

 京都駅から北へ車で1時間半。かやぶきの里で有名な京都府南丹市美山町に「CYCLE SEEDS(サイクルシーズ)」はある。

 サイクリングの拠点で、子どもの居場所でもある。ソファでゲームや漫画、友達とおしゃべり、机で宿題……。屋内での過ごし方は自由だ。

 広々としたガレージの壁には大小のロードバイクがずらりと並ぶ。

 運営するのは中島隆章さん(58)、通称「ブラッキー中島」。子どもから「ブロッコリーさん」とも呼ばれる。

 金髪に半袖のサイクルウェア姿で、黄色や緑に塗った軽トラックを乗り回すので、集落ではかなり目立つ。

 本業はグラフィックデザイナー。ロードバイクに熱中し、美山町でレースに参加したのをきっかけにこの地と出会った。

 走りやすさや美しい風景に強くひかれ、2009年に移住。ロードバイクを核とした地域おこしを掲げ、美山で活動を広げるとともに、以前から全国に呼ばれて子ども向けの自転車教室も開いていた。そうした活動の拠点にと、寄付を募って16年に建てたのがサイクルシーズだった。

 だが、すぐ地元に広く認知されたわけではない。多忙で、週に何日かは美山にいないというブラッキーさんの事情もあった。

 状況を変えたのは、ある予期せぬ出来事だった。

 中学1年の太田天(そら)君…

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