第2回台湾有事、元陸将が恐れる最悪シナリオ「防衛戦略の議論避けられず」

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聞き手・牧野愛博
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 シンガポールで6月に開かれた「アジア安全保障会議シャングリラ・ダイアローグ)」で岸田文雄首相が基調講演を行い、「日本の防衛力の抜本的強化」を訴えました。陸上自衛隊東北方面総監を務めた松村五郎元陸将は「聴衆は、日本は一体何をしたいのだろうかと思ったはずだ」と述べ、「日本の防衛戦略を巡る議論を避けてはならない」と警告します。

 ――世論調査では、防衛力の強化を支持する声が過半数を占めています。

 確かに、日本の世論は現在の防衛力に不安を感じています。大半はロシアによるウクライナ侵攻を受け、「日本も中国や北朝鮮から攻撃されるかもしれない」という不安だと思います。

 でも、世界の安全保障の専門家は「中国や北朝鮮がいきなり日本だけを攻撃することは考えにくい」と考えています。中国の場合、台湾侵攻や南シナ海での紛争拡大が懸念されています。中国が台湾に侵攻する際、沖縄にある在日米軍基地を攻撃する可能性はあります。北朝鮮も半島有事の際、在日米軍基地を攻撃するかもしれません。

 そのとき、日本がどのような対応をするのか。岸田首相の講演には説明がありませんでした。だから、聴衆は「日本は何のために防衛力を強化するのだろう」という疑問を持ったと思います。

 ――岸田首相は講演で「ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化」などを強調しました。

 米国に比べれば、日本の主張はあいまいです。バイデン政権は「民主主義対権威主義」という構図を前面に出しています。「中国式の権威主義の拡大を防がなければならない」と訴えています。でも、日本は香港や新疆ウイグル自治区など、中国の人権問題について突っ込んだ制裁措置を取っていません。

 中国が台湾を、北朝鮮が韓国を、それぞれ攻撃したとき、日本は自らが攻撃を受けていなくても台湾や韓国を守ろうとするのでしょうか。集団防衛に踏み込むのかどうか、岸田首相の講演だけでははっきりしません。

 また、「抜本的な強化」の具体的な内容もわかりせん。国際社会は「日本は科学技術の先進国だ」という認識を持っています。無人機やサイバー、宇宙などの先端分野で、世界の軍事力のゲームチェンジャーを開発できる国を目指すのか、あるいは質的な面よりも量的な強化を考えているのか。そこもわかりません。

 日本の防衛は間違いなく、岐路に立っています。でも、国内では専守防衛を維持するのか、集団防衛に歩みを進めるのかといった議論が全くありません。そのような状況だから、岸田首相の講演は、世界の安全保障の専門家から不可思議な内容に映るのです。

国民的な議論が成立しない背景は

 ――なぜ、日本国内で議論が活発に行われないのでしょうか。

 一言でいえば「事なかれ主義…

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