無農薬の田にタガメ 「絶滅危惧」脱出に光明 羽生

猪瀬明博
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 2年前のちょうど今頃、埼玉県羽生市の田んぼで、国や県が絶滅危惧種に指定する国内最大級の水生昆虫「タガメ」が見つかった。自然繁殖していれば、県内では16年ぶりの大発見だ。果たして調査の結果は――。

 今回の採集記録は、虫の愛好者団体「埼玉昆虫談話会」の5月発行の会誌に載った。タガメを見つけたのは後藤雅浩さん(57)。ほとんど掘り起こしをせず、農薬や肥料も使わない後藤さんの水田に、体長55ミリのオスがいたという。水面に浮かぶ雑草の種をすくっているときに網に入った。

 後藤さんは教育活動を展開するNPO法人「雨読晴耕村舎」を主宰し、自然と親しみながら「農ある暮らし」を提唱している。「タガメが繁殖しているのではないか」と考え、近所の子どもたちに知り合いの専門家も加わって周辺で調査を始めた。

 残念ながら、周辺で新たなタガメは確認できなかったが、採集した個体の体表には自然の中で越冬した形跡があった。隣接する栃木県に複数の生息地があることや、県境寄りの群馬県東毛地域などで採集の報告や情報が相次いでいることから「周辺地域から飛来した個体と考えられる」と結論づけた。

 調査に協力した埼玉昆虫談話会幹事で埼玉県立自然の博物館の外部研究者・奥田恭介さん(30)によると、タガメが生きていくには化学汚染がなく、餌が豊富な水域が複数必要。街灯など強い光を放つものがないことも条件という。

 奥田さんは「後藤さんの水田のような場所が増えれば、埼玉でタガメが見られる日もそう遠くない。今回はそんな希望を与えてくれた」と話す。今回の採集後、隣接の加須市でもタガメが2匹見つかったことが分かった。

 後藤さんは「けなげに暮らす生き物が足元にいることをタガメに教えられた。周りの環境を見つめ直す機会になりました」と話していた。(猪瀬明博)