米政府がウクライナへの軍事支援を強めるなか、ロシアのプーチン大統領との「対話」を試みるべきだと異論を唱える専門家がいます。米ジョージタウン大のチャールズ・カプチャン教授(国際関係)。ウクライナの「勝利」を願う人たちからの批判も覚悟で、持論を発信し続ける理由を聞きました。(ワシントン=高野遼)
Charles Kupchan 米ジョージタウン大教授。2014~17年、オバマ政権で大統領特別補佐官、米国家安全保障会議(NSC)欧州担当上級部長。クリントン政権でも、NSCで欧州担当部長を務めた。著書に「ポスト西洋世界はどこに向かうのか」(勁草書房)など。
「軍事戦略から外交戦略へ」
――米国によるウクライナ支援はどうあるべきだと考えますか。
バイデン政権は昨年末から、ロシアによる侵攻に非常に良く対応してきました。事前準備や協議を重ねたことで、侵攻の初日から兵器提供や制裁を主導することができました。
問題はこれからです。軍事的により困難な局面を迎えているためです。
プーチン大統領は当初の目的が達成困難だと気づき、(ウクライナ東部)ドンバス地方に重点を置き、勢いを得つつある。米国はウクライナへの兵器提供をしつつも、同盟国やウクライナ、そして最終的にはロシアと、停戦や戦争の早期終結、領土問題の解決に向けたプロセスについて話し合いを始めるべき時だと思います。
――領土の譲歩について「ウクライナに指図するつもりはない」と明言したバイデン大統領とは異なる意見ですね。
バイデン氏は、ウクライナとそうした対話を始めなければいけないと思います。ウクライナには、東部やクリミア半島からロシア軍を追い出すほどの能力はないと考えるからです。
ウクライナの「勝利」を目指…
【無料会員限定】スタンダードコース(月額1,980円)が3カ月間月額100円!詳しくはこちら
- 【視点】
「ロシアと交渉して戦争を終わらせる」ということができればそれに越したことはないのだと思いますが、問題はロシアに交渉する気があるかどうかでしょうね。 現状、プーチンが交渉に応じる気配は見せておらず、ウクライナとしては話し合う以前に国家が消滅