突然訪れた、旅路の終わり 「靴下屋」創業者が愚直に追った夢の先

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木元健二
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 日本一の靴下屋になる――。そう書かれた貼り紙が、壁一面に並んでいた。

 専門店「靴下屋」を展開する「タビオ」(大阪市浪速区)の創業者、越智直正さん(82)が、交通事故で世を去り、半年近くになる。ともに靴下業界を歩んだ「コポ」相談役、中川雅庸さん(79)の、盟友が靴下卸店から独立した頃の記憶は鮮明だ。1968年。お祝いに訪れ、躍るような字を見て、ただ驚いた。

 「自宅で始めたささやかな商いなのに、あまりにも現実離れしていた目標だったのでね」

 初心は忘れられなかったのだろう。

 越智さんが興した会社が後年、タビオと名乗ったのは、理想の靴下を世界中に旅をさせたい、との思いを込めたからだ。今では英仏、中国に進出し、直営とフランチャイズなど約280店を展開する。

 愛媛県出身。農家の11人きょうだいの末っ子は、人一倍甘ったれだった。学校の行き帰りに子分にカバンを持たせるガキ大将は中学卒業後、大阪・鶴橋の靴下卸店に丁稚(でっち)奉公へ。

 6畳の部屋に住み込みの従業員6人が寝るような暮らしに、すぐに逃げ出したくなった。

 「田舎者の劣等感があるからいつもまごついて、人の失敗まで僕のせいにされた。ついたあだ名は『防波堤』だった」

 3年後、友の便りに、閉じた心がガラリと開く。

 同級生から高校を卒業したと…

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