小島庸平・東京大学准教授
子世代は親世代より経済的に豊かになるか? 17カ国で尋ねると、日本は最も将来に悲観的でした。何が原因か。「サラ金の歴史」の著者で経済史が専門の小島庸平・東京大学准教授は、出生数の「山」の不在に注目します。
「子世代は親世代より経済的に豊かになるか?」という質問は、米調査機関ピュー・リサーチ・センターが毎年行う国別の世論調査の項目の一つ。2021年春の調査は16カ国で、各国約1千人を対象に電話調査を行った。順位は同年の米国向けの調査を加え、作成した。同センターによると、日本ではこの質問を2013年以降、7回実施。「豊かになる」の回答は、最高が17年の19%、最低は19年の13%だった。
ロスジェネ世代の格差を放置したツケ
――日本は他国より、経済の先行きに悲観的と言えそうです。どう受け止めましたか。
違和感なく受け止めました。今の日本経済には、楽観できる要素が見当たりません。政府や日銀の対応も手詰まり感があります。
――原因はどこにあるでしょうか。
最大の要因の一つは少子高齢化でしょう。増え続ける高齢者を、減り続ける現役世代が支える。年金の目減りを見越し、家計は消費や投資をおさえ、貯蓄にまわす。国内の市場拡大は期待できず、企業も投資を控えます。
ただ少子高齢化は、他の先進国でも進んでいます。なぜ日本が特に悲観的か。その理由を考えていくと「世代の問題」に行き当たります。
――世代ですか。どんな問題でしょうか。
バブル崩壊後の長期不況に苦しんだ「ロストジェネレーション」と呼ばれる世代を支援せず、格差を放置してきました。今の停滞はいわば、そのツケを払っている状態だと考えています。
――格差をなくしていれば、経済成長できたということでしょうか。
目の前の格差や不公正をなくすことは、経済的に見返りのあることなんだという視点が、もっとあってもいいはずです。社会が人々の暮らしに対して、公正に配慮するという期待や安心感があるからこそ、人々は安心して、家族を作ったり消費したりできますよね。
――これまでは、そうではなかったのでしょうか。
ロスジェネ世代の話に戻ると、ロスジェネ世代が就職や結婚、出産といったライフイベントを迎えるタイミングに、バブル崩壊後の不況が重なってしまった。結婚するかしないか、子どもを持つか持たないかはもちろん、個人の問題です。生き方が多様になるのは望ましいことでしょう。ただ当時、不安定な就業や失業を理由に、結婚や出産を望んでいたのにできなかった人の数は、潜在的には決して少なくなかったのではないでしょうか。
――ロスジェネ世代の影響で少子化が決まるのですか。
もちろん、この世代だけで少…
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